「月給65万円でもウクライナで戦いたくない」 徴兵忌避増えるロシアの若者
もう1つの人権団体「シチズン・アーミー・ロー(市民・軍・法)」は、軍ではなく病院などの国営機関で働くなど、兵役以外の形での公的奉仕を模索する人への助言に力を入れている。この団体によれば、問い合わせる人は、昨年の同時期には40人前後だったのが、最近ではその10倍に当たる400人以上に増加したという。同団体のセルゲイ・クリベンコ氏は、「怯えている人は多い。実際に戦闘に従事している軍には入りたくないのだ」と語る。
「プリツィブニク(徴集兵)」と呼ばれる法務支援団体の会長を務める弁護士のデニス・コクシャロフ氏は、具体的な数は明らかにしなかったものの、ウクライナ侵攻当初、兵役回避についての助言を求める人の数が約50%増大したと話す。問い合わせの件数はその後減少し、最近では戦闘を志願する若者の数が増えていると話す。
コクシャロフ氏はこうした変動について、人々が紛争という状況に慣れ、「愛国心を示そうとする」人が増えたのではないかと推察している。
母国を離れて
サンクトペテルブルク出身のフョードル・ストレリンさん(27)は、侵攻開始直後には戦争に抗議していたが、2月末にはロシアを離れる決意を固めたという。
現在ジョージアの首都トビリシに移ったストレリンさんは昨年、近視を理由に免除を認められて兵役を回避していたが、全面的な動員の懸念があることからロシアを離れることを選んだと話す。「故郷を離れて寂しいし、自分の居場所を失ってしまったという思いがある」とストレリンさんは言う。
軍務に就くよう召集を受けた若い男性の中には、当局が他で十分な人数を確保していることを当て込んで召集を無視する人もいるという。ロイターの取材に応じた若者や弁護士、人権活動家6人が明らかにした。
テクノロジー分野で働くロシア南部出身のキリルさん(26)の場合、4月に召集令状が届いた後、5月には身体検査を受けるよう電話があった。だが、ウクライナでのロシア軍の作戦を支持していないため、応じなかったという。
キリルさんによれば、そのせいで戦争を支持し、誰もが兵役義務に応じるべきだと考える家族や友人の一部との関係が緊張したという。「ウクライナの人々は兄弟のようなものだ。あの国は知り合いもたくさんいるし、こうした軍事行動は支持できない」とキリルさんは説明する。