インフレ加速で高まる社会不安 憂慮すべき5カ国まとめ
スリランカでは経済危機をめぐる抗議行動により政権が崩壊した。インフレの急激な進行に伴い世界各地で社会不安が高まる中、こうした例が今後続々と生じる可能性がある、とアナリストらは警告する。写真は6月、アルゼンチン中部サン・ニコラスで封鎖されたハイウェー。トラック運転手らがディーゼルの不足と価格高騰に抗議した(2022年 ロイター/Miguel Lo Bianco)
スリランカでは経済危機をめぐる抗議行動により政権が崩壊した。インフレの急激な進行に伴い世界各地で社会不安が高まる中、こうした例が今後続々と生じる可能性がある、とアナリストらは警告する。
国連によれば、ウクライナでの戦争をきっかけとする食料、燃料、肥料の価格高騰により、3月以降の3カ月間で、開発途上国の7000万人以上の住民が貧困状態に追いやられたという
より豊かな国でも家計は圧迫を感じつつある。世界経済フォーラム向けにイプソスが5月に実施した世論調査では、先進11カ国で、4人に1人が経済的困難に見舞われていることが明らかになった。
国連開発計画のアヒム・シュタイナー総裁は7月の声明で、「かつてない水準の物価上昇は、世界中の多くの人々にとって、昨日まで買えた食料が今日はもう手に入らないということを意味する」と指摘した。
スリランカでは、慢性的な外貨不足が手に負えないインフレをもたらし、物価上昇と生活必需品の不足に対する大規模な抗議行動が生じた。
英国やフランスからイランやギニアに至るまで、抗議行動やストライキの参加者は、少しでも生活コストの上昇に対応できるよう、賃上げと政府による給付金の増額を要求しており、対立と暴力が激化するリスクが高まっている。
データ分析会社ベリスクが作成する「社会不安指数」によれば、今年中に抗議行動が増加する可能性があるのは75カ国だ。
そのうち、憂慮すべき状況にある5カ国を見ていこう。
1.ハイチ
2021年7月のジョブネル・モイーズ大統領暗殺事件以降、ハイチの治安は悪化している。ただでさえ緊迫していた同国の政治状況はさらなる混迷に陥っている。
犯罪組織による暴力が激化する中で、今月に入って燃料不足に抗議するデモ参加者が首都ポルトープランスの街路を封鎖した。数十人の死者が発生し、近隣の地区では食料・水の供給が途絶えた。
ハイチ国民の約半数は食料不足に陥っており、飢餓状態も悪化しつつある。インフレ率が26%に達し、物価上昇と暴力の激化により、買い物や緊急支援物資の入手のために外出することも危険になっているからだ。
島国であるハイチは穀物の70%を輸入しており、グローバルな食料・燃料市場の混乱に対して脆弱(ぜいじゃく)だ。