クロアチアのベンチャーが創るEVスーパーカーの新時代
Rimac's Key to Success Is To Keep Them Guessing
リマック創業者兼CEOのマテ・リマック Rimac Group
<クロアチアから世界のスーパーカー業界に華々しく乗り込んだEV関連スタートアップ「リマック」。老舗のブガッティ、ポルシェとベンチャーファンドを結びつけ、EVの新たな歴史を切り開こうとしている>
マテ・リマックが、自身の名を冠した急成長中の自動車会社を立ち上げてから、そろそろ12年になる。フォードやメルセデスベンツ、ブガッティといった自動車メーカーの長い歴史と比較すれば、まだ序章に過ぎない。
クロアチアを拠点とする同社は創業以来成長を続け、昨年8月には新型EVハイパーカーのリマック『ネヴェーラ』で、0~400m加速8.582秒という市販車の世界最速記録を達成したと発表。現在1500人の従業員の多くはここ数年に採用された。半数以上はエンジニアだという。
2カ月前、同社は2つの会社に分かれた。リマック・テクノロジーは電動パワートレインとハイテク部品を担当し、リマック・アウトモビリはEVスーパーカーの開発と生産の拠点となった。
リマックグループは、両社の持株会社で、マテ・リマックがCEOを務めている。グループの株主は、ポルシェ(24%)、現代自動車グループ(12%)、マテ・リマック(37%)、その他の投資家(27%)だ。
また昨年11月には、ポルシェ、ブガッティ、リマック3社の合弁会社ブガッティ-リマックを設立。
リマックグループが新会社の株式の55%を所有、残りの45%は、フォルクスワーゲングループ傘下のポルシェが所有している。
今年初めには、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2とゴールドマン・サックスから出資を受け、シリーズDファイナンスで5億3600万米ドルの資金調達に成功。前進のためのさらなる強固な足がかりを確保した。
多方面からのサポート
リマックの創業者でCEOのリマックは、こうした動きを多面的なアプローチの一環だと説明した。「わが社は大手自動車会社にサポートされている。一方でテック投資大手のソフトバンク、産業界や金融機関に投資するゴールドマンにも助けられている。わが社にとって非常にバランスのいい形で、適切な人々が様々な分野で私たちを支援している」
6月に行われた記者会見で、リマックCEOは、同社の経営状況について、ウクライナ戦争やロシアの経済困難以上に、中国における新型コロナの感染拡大による生産停止が足かせになっていると説明した。
本誌に対しても、現在の経済状況において同社が最も苦労しているのは中国の電子部品の確保だと率直に語り、同社が必要とする技術を確保するため通常価格の10~30倍もの「莫大な、途方もない割増価格」を支払っていることを明らかにした。
その他とりわけ供給不足が深刻なのは、電気の供給や電子機器の接続に使われるワイヤーハーネスだ。その多くは7万人のウクライナ労働者が手作業で作っていたため、ロシアのウクライナ侵攻で、多くの自動車メーカーが調達困難に陥った。リマック社はなんと、自社でハーネスを作るという垂直統合を実現した。
「(機械で)ワイヤーハーネスの製造を再現することはできない。常に手作業だ」と、リマックCEOは言い、他の自動車メーカーの苦境に同情した。