最新記事

自動車

クロアチアのベンチャーが創るEVスーパーカーの新時代

Rimac's Key to Success Is To Keep Them Guessing

2022年7月6日(水)18時17分
アイリーン・ファルケンバーグハル

リマック創業者兼CEOのマテ・リマック Rimac Group

<クロアチアから世界のスーパーカー業界に華々しく乗り込んだEV関連スタートアップ「リマック」。老舗のブガッティ、ポルシェとベンチャーファンドを結びつけ、EVの新たな歴史を切り開こうとしている>

マテ・リマックが、自身の名を冠した急成長中の自動車会社を立ち上げてから、そろそろ12年になる。フォードやメルセデスベンツ、ブガッティといった自動車メーカーの長い歴史と比較すれば、まだ序章に過ぎない。

クロアチアを拠点とする同社は創業以来成長を続け、昨年8月には新型EVハイパーカーのリマック『ネヴェーラ』で、0~400m加速8.582秒という市販車の世界最速記録を達成したと発表。現在1500人の従業員の多くはここ数年に採用された。半数以上はエンジニアだという。

2カ月前、同社は2つの会社に分かれた。リマック・テクノロジーは電動パワートレインとハイテク部品を担当し、リマック・アウトモビリはEVスーパーカーの開発と生産の拠点となった。

リマックグループは、両社の持株会社で、マテ・リマックがCEOを務めている。グループの株主は、ポルシェ(24%)、現代自動車グループ(12%)、マテ・リマック(37%)、その他の投資家(27%)だ。

また昨年11月には、ポルシェ、ブガッティ、リマック3社の合弁会社ブガッティ-リマックを設立。

リマックグループが新会社の株式の55%を所有、残りの45%は、フォルクスワーゲングループ傘下のポルシェが所有している。

今年初めには、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2とゴールドマン・サックスから出資を受け、シリーズDファイナンスで5億3600万米ドルの資金調達に成功。前進のためのさらなる強固な足がかりを確保した。

多方面からのサポート

リマックの創業者でCEOのリマックは、こうした動きを多面的なアプローチの一環だと説明した。「わが社は大手自動車会社にサポートされている。一方でテック投資大手のソフトバンク、産業界や金融機関に投資するゴールドマンにも助けられている。わが社にとって非常にバランスのいい形で、適切な人々が様々な分野で私たちを支援している」

6月に行われた記者会見で、リマックCEOは、同社の経営状況について、ウクライナ戦争やロシアの経済困難以上に、中国における新型コロナの感染拡大による生産停止が足かせになっていると説明した。

本誌に対しても、現在の経済状況において同社が最も苦労しているのは中国の電子部品の確保だと率直に語り、同社が必要とする技術を確保するため通常価格の10~30倍もの「莫大な、途方もない割増価格」を支払っていることを明らかにした。

その他とりわけ供給不足が深刻なのは、電気の供給や電子機器の接続に使われるワイヤーハーネスだ。その多くは7万人のウクライナ労働者が手作業で作っていたため、ロシアのウクライナ侵攻で、多くの自動車メーカーが調達困難に陥った。リマック社はなんと、自社でハーネスを作るという垂直統合を実現した。

「(機械で)ワイヤーハーネスの製造を再現することはできない。常に手作業だ」と、リマックCEOは言い、他の自動車メーカーの苦境に同情した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場・午前=大幅反発、前日の急落から地合い

ビジネス

FRB議長解任、検討されていないこと強く望む=EC

ビジネス

米FRB、「政治的独立」で信頼構築=フィラデルフィ

ビジネス

IMF、金融安定リスク大幅拡大に警鐘 貿易巡る混乱
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「利下げ」は悪手で逆効果
  • 4
    日本の人口減少「衝撃の実態」...データは何を語る?
  • 5
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 6
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 7
    なぜ世界中の人が「日本アニメ」にハマるのか?...鬼…
  • 8
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 9
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 10
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 7
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中