最新記事

アメリカ経済

ガソリン高騰で通勤のために質屋で借金するアメリカ人

Americans Pawning Items to Buy Gas, Survive Inflation: Pawn Shop Owners

2022年6月20日(月)16時07分
トーマス・キカ

ニューヨークの質屋から出てきた女性(コロナ流行中の2020年4月)Mike Segar-REUTERS

<ガソリン代の高騰とインフレに財布を直撃されているアメリカの消費者は、生活のために身の回りの品を質入れしはじめた>

ガソリン価格の高騰で困ったアメリカの消費者が、切羽詰まって質店に駆け込む例が増えている。

テキサス州ラボックにある質店ポーン・テキサスのオーナー、エイルセル・ガルシアは、地元のテレビ局フォックス34ニュースの取材に対して、地元の住民がガソリン代を賄うために持ち物を質に入れるケースが増えていると話した。質草は銃器、工具、コンピューター、電話、ゲーム機など。さらには宝石や相続した家宝のように大切な品物もあるという。

「金策のため身の回りのものを質入れにやってくるお客さんの力になるのが私たちの仕事だ」と、ガルシアは説明した。「出勤するためのガソリンもないという人もいる。母親やご先祖の形見の品や、ときには結婚指輪さえ質入れしている」

テキサス州選出のテッド・クルーズ上院議員(共和党)は、6月18日にフォックス 34の報道についてコメントし、ツイッターでジョー・バイデン大統領の経済政策を攻撃した。「アメリカ人はガソリンを買うために身の回りのものを質に入れている。バイデンが『われわれは人々の生活を変えている』と言ったのはこのことなのか?」

必需品を買うために

燃料価格調査会社ガスバディによると、ラボック市のガソリン価格は現在、平均で1ガロン(約3.8リットル)=4.50ドル前後で推移している。アメリカ自動車協会(AAA)によると、テキサス州全体の平均価格は現在4.66ドルで、アメリカ全体でみると安い方だ。全米平均は11日に史上初めて5ドルの大台を超え、現在は4.98ドル前後となっている。

通勤用のガソリンのために質入れに迫られたという住民が多いが、フォックス34によると、他には緊急事態で家族のもとへ駆けつけるために、イヤホンを質入れしなければならなかった利用者もいた。「もう暗いし、おばあちゃんに会いに帰らなきゃ。おばあちゃんはたぶん、助からない」と、この利用者は説明した。「数日前から入院しているの」

ダラス・フォートワース地域でも、質入れが増えている。ダラスの質店P&J ポーンのオーナー、パトリック・ウェイドは、顧客が品物を売る理由についてNBC-DFWの取材に答えた。

「ガソリンと食料品など日々の必需品ためだ」と、ウェイドは言う。「家族を養わなければならない。仕事に行かなきゃならない」

ウェイドやポーン・テキサスの経営者たちは、インフレのおかげで質屋の利用者数が急増する一方で商品はさっぱり売れないため、質屋は過剰在庫を抱えていると語る。

「前例のない事態だ」と、ウェイドは言う。「毎日、見たこともないほどの数の品物が質入れされる。しかも多くが質流れになる。質草に対して貸し出す金額も下げざるを得ない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「BRICS通貨つくるな」、対応次第で1

ワールド

米首都の空中衝突、旅客機のブラックボックス回収 6

ビジネス

コストコ、米労働者向け賃上げ決定 最高で時給30ド

ビジネス

独VW取締役会、コスト削減強化を要求=報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中