最新記事

犬は子供と同じように衝動をコントロールする術を学ぶ 研究結果

2022年6月16日(木)17時10分
佐藤太郎

犬は幼児と同じように行動を制御している hobo_018-iStock

<ブリーダーの元で生まれ育った犬は保護犬よりも実行機能のレベルが高い。つまり適切な訓練を行えば、ほとんどの犬が行動を制御することができる>

「犬は人間と同じように行動を制御している」ことがオーストラリアにあるラトローブ大学の研究明らかになった。研究は査読付きの科学ジャーナル「Animal Cognition」誌に掲載された。

研究チームは、犬の実行機能の特徴を6つ特定した。

実験の対象となったのは、741人の犬とその飼い主。その結果、犬の実行機能の構成要素として、行動の柔軟性、飼い主への注意、運動抑制、指示への追従、遅延抑制、ワーキングメモリの6つが挙げられた。

指示に従う能力、身体的衝動の制御、ワーキングメモリの活用など、人間の認知に関連する構造と重なるという。

「表現方法は異なるものの、犬は幼児と同じように行動を制御している」と、主任研究員のマイク・フォレイティアは話す。

ペットの犬は、家具を噛んだり来客に吠えたりする衝動を抑え、日常のルーティンを覚える。飼い主の言うことを聞くなどして、子供と同じように衝動をコントロールする術を学んでいくそうだ。

「人間も同じことが言えます。ケーキを前にした時に手掴みで食べるのでなく、フォークを渡されるのを待つとき、衝動や運動を抑制しています」

3万年かけて人間に順応

犬と人間の認知構造が似ている理由は、人間と共生する何万年もの時間をかけて発達した可能性が高いと報告されている。

「過去3万年の間、人間と共に暮らしてきた犬は、生存するために、人間の環境に順応する行動調節した」とフォレイティアは説明している。

飼い主に吠えて噛み付いたり、食卓の皿から人間の食べ物を盗んだりする犬は嫌がられる。犬はそういう時の人間の反応から学んで、長い時間をかけて人間を真似た認知機能を発達させてきた。それが人間と暮らす犬の生存戦略だったのだ。

共同研究者のティファニ・ハウエル博士は、この研究について「犬が人間と特別な関係を持つ理由の一つを浮き彫りにする証拠」だと話す。他の動物はここまで及んでいない。犬と同等の認知レベルを持つ動物は他にもいるが、人間の生活に最適化させているわけではない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

政府、総合経済対策を閣議決定 事業規模39兆円

ビジネス

英小売売上高、10月は前月比-0.7% 予算案発表

ビジネス

アングル:日本株は次の「起爆剤」8兆円の行方に関心

ビジネス

三菱UFJ銀、貸金庫担当の元行員が十数億円の顧客資
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中