犬は子供と同じように衝動をコントロールする術を学ぶ 研究結果
犬は幼児と同じように行動を制御している hobo_018-iStock
<ブリーダーの元で生まれ育った犬は保護犬よりも実行機能のレベルが高い。つまり適切な訓練を行えば、ほとんどの犬が行動を制御することができる>
「犬は人間と同じように行動を制御している」ことがオーストラリアにあるラトローブ大学の研究で明らかになった。研究は査読付きの科学ジャーナル「Animal Cognition」誌に掲載された。
研究チームは、犬の実行機能の特徴を6つ特定した。
実験の対象となったのは、741人の犬とその飼い主。その結果、犬の実行機能の構成要素として、行動の柔軟性、飼い主への注意、運動抑制、指示への追従、遅延抑制、ワーキングメモリの6つが挙げられた。
指示に従う能力、身体的衝動の制御、ワーキングメモリの活用など、人間の認知に関連する構造と重なるという。
「表現方法は異なるものの、犬は幼児と同じように行動を制御している」と、主任研究員のマイク・フォレイティアは話す。
ペットの犬は、家具を噛んだり来客に吠えたりする衝動を抑え、日常のルーティンを覚える。飼い主の言うことを聞くなどして、子供と同じように衝動をコントロールする術を学んでいくそうだ。
「人間も同じことが言えます。ケーキを前にした時に手掴みで食べるのでなく、フォークを渡されるのを待つとき、衝動や運動を抑制しています」
3万年かけて人間に順応
犬と人間の認知構造が似ている理由は、人間と共生する何万年もの時間をかけて発達した可能性が高いと報告されている。
「過去3万年の間、人間と共に暮らしてきた犬は、生存するために、人間の環境に順応する行動調節した」とフォレイティアは説明している。
飼い主に吠えて噛み付いたり、食卓の皿から人間の食べ物を盗んだりする犬は嫌がられる。犬はそういう時の人間の反応から学んで、長い時間をかけて人間を真似た認知機能を発達させてきた。それが人間と暮らす犬の生存戦略だったのだ。
共同研究者のティファニ・ハウエル博士は、この研究について「犬が人間と特別な関係を持つ理由の一つを浮き彫りにする証拠」だと話す。他の動物はここまで及んでいない。犬と同等の認知レベルを持つ動物は他にもいるが、人間の生活に最適化させているわけではない。