解放ムードにお祭り騒ぎ──「コロナ収束を信じたい心理」が強すぎるアメリカ
THE PRICE OF COMPLACENCY
接種推進を妨げた最大の要因は、ワクチンが政治的対立をあおるツールにされたことだろう。これを打破するには教育がものをいうと、ロックフェラー財団の報告書作成に加わったイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の心理学教授ドロレス・アルバラシンは話す。
「幼稚園から高校までの公教育が大きな影響を与える。保健教育のカリキュラム改革は即効性はないが、やる価値はある。次のパンデミックが起きたとき、多くの人がウイルスとは何かを理解していれば、ワクチン接種の是非が政治的に利用されることを防げる」
コロナ収束を信じたい心理
アルバラシンらがまとめた報告書にはほかにも多くの改革案が示されている。例えば学校の換気システムの改善はコロナだけでなく他の呼吸器疾患の流行を防ぐためにも役立つだろう。医療崩壊を防ぐために各病院の病床使用状況を把握し、病院間で調整を行えるシステム作りも必要だ。
この報告書はまた、感染症の集団発生が報告されたときに直ちに取るべきステップ、言い換えればロックダウン(都市封鎖)を回避するためのステップも提示している。
過去2年間の教訓を生かした実効性のあるパンデミック対応は、バイオテロに対する備えとしても威力を発揮するだろう。生物兵器によるテロ攻撃の脅威は今後ますます現実味を帯びると専門家は警告している。
私たちはこの2年間というもの、目に見えないウイルスに脅え、友人や家族も含め他者との接触を避けてきた。「パンデミックは終わった。さあ、日常に戻ろう!」と言いたくなるのも当然だ。子供も親も、医療従事者も政治家も、誰もがコロナの脅威を忘れたがっている。
「パンデミックを過去のものにしたいという心理が働いている。これからは万事うまくいく、だから対策に金をかける必要はない、とね」と、ワイルコーネル医科大学のジョン・ムーア教授(ウイルス学)は言う。
「確かにそうなるかもしれない。だが、そうならないかもしれない」
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