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解放ムードにお祭り騒ぎ──「コロナ収束を信じたい心理」が強すぎるアメリカ

THE PRICE OF COMPLACENCY

2022年6月8日(水)16時25分
フレッド・グタール(本誌記者)

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制限された生活はもう終わり? アメリカではマスク姿の人は減り、バーは大混雑、学校も再開された。ニューヨークのマジソンスクエアパーク(写真)も以前のように ALEXI ROSENFELD/GETTY IMAGES

アメリカの医療システムには不備が多い。公衆衛生の観点からは特にそうで、保健医療での行政の大半は州が担い、それがアプローチの分裂を助長している。しかも、医療システムの核である国も脆弱だ。疾病対策センター(CDC)や国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)といった省庁と政府の間の責任系統が曖昧で、連携が不足しがち。アメリカの医療システムは無秩序で、継ぎはぎだらけなのだ。

特に顕著なのが感染症サーベイランス能力、つまり感染爆発に関する情報をリアルタイムで収集し、その情報を基に意思決定する能力の欠如だ。

例えば、患者数増加の指標となる下水中の新型コロナウイルス濃度に最近上昇が見られた。下水モニタリングは感染症サーベイランスに役立つ可能性があり、多くの州が採用している。だが標準的な測定方法はなく、情報を収集・分析する全米規模の包括的システムもない。ロックフェラー財団の報告書はそうした統合システムの構築を求めている。

米公衆衛生当局はサーベイランス能力に欠けるせいで、パンデミック当初から終始、より優れたサーベイランスシステムを持つイスラエルやイギリスのデータに頼ってきた。

だからコロナウイルス研究の多くはイスラエルやイギリスの研究者の手によるもののように見える。彼らが活用できる膨大なデータはアメリカには存在しないのだ。「データも、データ分析の共通の方法もなければ、視界ゼロで飛行するようなもの」だと、リーフバーグは言う。

明らかに成功した唯一のアメリカのコロナ対応は「ワープスピード作戦」だろう。mRNAワクチンの効果がまだはっきりしない段階で、政府が潤沢な資金を提供しワクチン開発を強力にプッシュした。だがその後のワクチン接種の推進は不十分で、多くの人が接種をためらった。

接種対象のアメリカ人のうち少なくとも1回接種をした人は4分の3、必要回数の接種を完了した後に追加接種を受けた人は3分の1足らずにすぎず、追加接種を受けた65歳以上の住民が半数に満たない州もある。

ワクチン接種をためらう人や、接種後に時間がたってワクチンの効果が下がっているのに追加接種を渋る人が多ければ、それだけ新たな変異株が生まれるリスクが高まる。

コロナに限らず、病原体との戦いには終わりがない。感染拡大を一気に抑え込まなければ、変異株が次々に現れイタチごっこが延々と続きかねない。この2年間の教訓の1つは啓発活動を行い、ワクチン接種を受けやすい環境を整えるなどして接種率を高める必要があること。そこにもっと注力しなければならない。

接種をためらう理由は千差万別だ。宗教的な理由もあれば医療に対する不信感もある。コロナで失業したり鬱になったりして接種どころではないとか、接種場所に出向く交通手段がないといった事情もあるだろう。100%近い接種率を達成するには、きめ細かな働き掛けとそれを可能にするシステム作りが欠かせない。

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