最新記事

心理

嘘を高確率で見抜く方法、イギリスの研究者が明かす 特別な道具は必要なく......

2022年6月2日(木)18時31分
青葉やまと

研究者たちが、効果的に相手の嘘を見破る方法を論文で明かした...... zsv3207-iStock

<人間はかなり嘘が上手だ、と英心理学者は語る。直観で見抜きやすくコツとは>

相手の嘘を見破りたい場合、ある程度有効なテクニックというものは実際に存在するようだ。英ポーツマス大学などの研究者たちが、効果的に相手の嘘を見破る方法を論文で明かした。

コツは質問する際、何か複雑なタスクを同時進行で相手にこなさせることだという。100名以上の参加者を募って実験したところ、難しい記憶タスクを同時に与えられた話し手は、聞き手から嘘を見破られることが多くなった。矛盾のない主張を考えるだけの思考力の余地が奪われたと研究チームは考えている。

この発見は、日常生活にすぐに取り入れることもできそうだ。相手が言い逃れるかもしれない重要な質問がある場合、その相手が別のタスクに集中しているタイミングを狙って質問を仕掛けることで、巧妙な言い逃れを防止できるだろう。

本研究はポーツマス大学が5月、リリースを通じてその成果を発表した。元となる研究論文は今年3月、学術誌『International Journal of Psychology & Behavior Analysis』に掲載されている。

嘘にはかなりの集中力を要する

嘘をつくことに集中できない場合、その嘘はかなりバレやすくなるようだ。実験では164人の参加者を2グループに分け、片方には真実を、他方には嘘を語ってもらった。質問者側は真実と嘘を見分けるのに苦労したが、複雑な英数字を覚えておくタスクを回答者に課すと、途端に見抜ける確率が上昇したという。

参加者たちはまず、研究チームと面談を行い、自分の正直な考えを明かした。ニュースなどで議論を呼んでいる各種テーマに対し、どの程度賛成または反対の立場なのかを正直に話した。「女性は中絶の権利を有するべきである」や「重犯罪において死刑は法的に認められるべきである」など20のシリアスなテーマが研究チーム側から示され、これらへの率直な意見を述べている。

このアンケートへの回答結果をもとに、個人ごとに主張すべき立場が割り振られた。各人が賛成あるいは反対の立場を最もはっきり主張した3つのテーマに関し、「自分の立場を正直に話す」または「偽って逆の立場を主張する」のいずれかがランダムに割り振られた。

参加者はそれぞれ、指定された意見を別の聞き手に対して主張したが、聞き手側は真偽を見抜くのに苦労したという。話し手はかなり巧妙に自分の立場を偽ることができ、どの主張もあたかも本心のように聞こえたようだ。

そこで研究チームは次の段階として、英数字混合の7桁のナンバープレートを覚えておくという指示を話し手側に与えた。すると、聞き手は嘘と真実を直観的に見破る機会が増えたという。嘘を話している際にはもっともらしい響きが失われ、内容もあいまいで具体性を欠くことが多くなったことから、明らかに嘘だと見破りやすくなったようだ。

人間はかなり嘘が上手

実験計画を策定したポーツマス大学心理学科のアルダート・フライ教授は、人間には本来、嘘をつくのがかなり上手だと指摘する。「これまでの我々の研究により、嘘をつく側の人々が何を発言するか考えるだけの十分な機会をもっている限り、真実も嘘も同じくらいもっともらしく聞こえることがわかっています。」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米中古住宅販売、10月は3.4%増の396万戸 

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4

ビジネス

ECB、12月にも利下げ余地 段階的な緩和必要=キ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中