最新記事

心理

嘘を高確率で見抜く方法、イギリスの研究者が明かす 特別な道具は必要なく......

2022年6月2日(木)18時31分
青葉やまと

しかし、熟考する余裕さえ奪ってしまえば、上辺だけの返答は容易に見抜けるようになるという。教授は「考える機会が少ない状況では、真実は往々にして嘘よりも信憑性を帯びて聞こえるのです」と説明している。

なお、この手法で嘘と真実を見分ける場合、話し手が並行して進める方の作業にも集中している必要がある。実験では、記憶タスクに対して報酬を用意し、重要さを回答者に認識させた場合にのみ効果を発揮したという。さほど重要でない作業だという認識の場合、回答者は無意識に作業の優先度を下げ、嘘を用意するための思考に集中してしまうようだ。

真偽を見破るポイントは

それでは、話の真偽を見破る場合、どのようなポイントに集中して耳をそば立てればよいのだろうか。

相手が長々と語数を割いて説明したとしても、必ずしも信頼できるとは限らないようだ。同時進行のタスクに報酬を用意して真剣に取り組んでもらった実験では、仮説に対する証拠の強さを数値化した「ベイズ因子(B10)」が、「語数」「肯定的な主張の数」「否定的な主張の数」に対して0.50〜1.44となっている。これは、関連があったとしても実質的にほとんど意味がないとみなされる範ちゅうだ。

他方、「回答の即時性」「単刀直入さ」はそれぞれ9.94と17.56となり、相応の強い支持を示す数字となっている。質問に対してすぐに核心的な答えが返ってくる場合、ある程度信頼できるといえるだろう。

さらに、「もっともらしさ」「明確さ」のベイズ因子は54.93と55.68となり、話す内容の真偽性と密接に関わりがあることがわかった。話に矛盾が感じられず、細部まで説明できているようなら、相手の話はかなり信用できるといえるだろう。

この原則は、自分がやむを得ず嘘をつかなければならない場面でも役立つかもしれない。ほかのタスクに掛かりきりの状況で質問を受けると、うまくかわしているつもりでも、矛盾した回答を口にしやすくなってしまう。

手を止めて質問に集中して向き合うなどして、2つの作業を同時に進めないよう意識するとよさそうだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 10
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中