致死率わずか0.001%? 北朝鮮の「コロナ感染」データは絶対に何かがおかしい
ソウルの駅の大型モニターに映し出されるマスク姿の金正恩(5月14日) AP/AFLO
<ついに新型コロナ感染を公表した北朝鮮だが、発表された数字はつじつまが合わない。そこにどんな意図があるのかを読み解く>
北朝鮮が5月12日、国内の新型コロナウイルス感染を初めて公表したが、多くの識者にとって以前から予想されていた事態だった。オミクロン株の高い感染力を考えれば、感染ゼロはあり得ない。
だが当局がさらなる感染爆発を発表した今、筆者はその信頼性に疑問を持たざるを得ない。理由は──数字が合わないからだ。
この記事の執筆時点で、北朝鮮は2週間で300万人以上の「発熱」を報告している。新型コロナの検査能力がほとんどないため、感染確認数の代わりに発熱数が使われることに違和感はない。一方で、死者数は68人にとどまっている。少なくともどちらかの数字が間違っているはずだ。
発熱者を額面どおりに新型コロナ感染者とするなら、死者数はもっと多くないとおかしい。例えば、オミクロンは感染者の25~50%に発熱症状が出ることが分かっている。発熱が事実なら、少なくとも600万人が感染したことになり、死者数が68人なら致死率はわずか0.001%だ。
韓国では冬のオミクロン流行時、ワクチン接種率が82%を超えていたもかかわらず、致死率は0.12%とはるかに高かった。それを考えると、北朝鮮の数字は信じられないと言わざるを得ない。
もちろん、報告された発熱のかなりの部分が季節性インフルエンザなど、他の病気によるものだった可能性はある。だが、わずか2週間で300万人の発熱者が出たという報告は、一般的な病気としては極めて異例だ。
考えられる北朝鮮の「実態」とは
もう1つ奇妙なのは、北朝鮮がヒョン・チョルヘ元帥の大規模な葬儀を強行したように見えることだ。本当に新型コロナの感染者が数百万人いて、流行が続いているとしたら、当局は数千人が通りに並ぶことを許可するだろうか。
考えられるシナリオはいくつかある。まず、実際には感染爆発が起きていないケースだが、その可能性は低そうだ。北朝鮮の医師たち(何らかの形で情報交換をしているはずだ)が誰も発熱の診断をしていなかったとしたら、当局が数百万人の発熱を主張することは可能だろうか。
第2のシナリオは、新型コロナの軽い流行はあったが、当局がもう沈静化したと判断しているケース。この場合、北朝鮮メディアは新型コロナ対策の成功を誇示するため、致死率を低く(つまり、発熱者数を死者数に対して過大に)報道するはずだ。