日本の次期戦闘機(仮称F3)の開発パートナーが、米国から英国に変更された理由──新「日英同盟」の時代
防衛省筋によると、米国の次世代戦闘機開発と日本の次期戦闘機開発のタイミングが合わず、スケジュール感が大きく異なっていたことや、米国側は次世代の戦闘機を無人機にすることを考えているのに対して、日本側は既存の技術を発展させた有人機をめざしており、日米の間で戦闘機の未来像に隔たりがあったことが、米国が退いた理由として大きいという。
さらに、米国側が開発にあたって主要な装備を米国製にすることを求めたため、それでは日本の航空技術の育成につながらないという日本側の懸念があったという。
これに対して、英国は「テンペスト」という次期戦闘機の開発計画をイタリア、スウェーデンと共同で進めており、その完成の時期も日本と同じ2035年であることから、スケジュール感を共有できるという利点があった。
また、英国がテンペスト計画で培った技術を日本側が取得できる可能性がある一方、逆に英国側にとっては日本の技術をテンペスト計画に転用することが期待できるなど、日英双方にとって得られる利益が大きい点も魅力的だったようだ。
さらに、英国はエンジンやレーダーも日本と共同で開発し、改修についても両国が自由にできることを提案しており、英国なら日本の対等なパートナーとしてふさわしいとする見方が防衛省や防衛産業の間で強かったようだ。
防衛省はこうして最終的に共同開発のパートナーを英国に変更する方針を決めたとみられている。
政府筋によれば、この方針は2022年5月4日、岸防衛相がワシントンで米国のオースティン国防長官と会談した際、まず米国側に伝えられ、理解を得た。そして、その翌日、英国を訪問した岸田首相がジョンソン首相との会談で日英共同開発を進めることについて話し合ったという。
ただし、米国は次期戦闘機の開発から完全に撤退したわけではなく、データリンクシステムの構築や無人機との連携システムなどについては限定的に協力することになるらしい。
一方、英国との共同開発にあたっては英国のテンペスト計画に参加しているイタリアやスウェーデンも関与する可能性があり、日本の次期戦闘機は日本と欧州諸国が開発する初めての戦闘機になりそうだ。
戦闘機には政治的側面があり、単なるシンボルでもない
一般的に言って、戦闘機には他の装備には見られない政治的側面がある。
それは戦闘機がその国の守りのシンボルであり、その国の外交を体現しているということだ。例えば、日本が戦闘機を米国と共同開発しているのは、諸外国から見れば日本が米国の同盟国であることを象徴的に示している。
また、インドがロシア製、フランス製、英国製を混合で運用しているのは、伝統的な非同盟路線を踏襲している外交姿勢をうかがわせる。サウジアラビアが米国製と欧州製の両方の戦闘機を保有しているのは、米国と欧州の中間の立ち位置にあることをアピールするためである。