日本の次期戦闘機(仮称F3)の開発パートナーが、米国から英国に変更された理由──新「日英同盟」の時代
戦闘機の調達には国産と輸入、さらに共同開発の3つの方法がある。
このうち国産の場合、自主開発で行う場合と外国の戦闘機をライセンス生産する場合があるが、どちらも技術的に限界があるうえ、コストがかかる。
また、米国などから戦闘機の完成品をまるごと輸入する方法もあるが、戦闘機は軍事機密の集積であり、勝手に改修したりはできないから、いくら安価でも外国製の戦闘機では自国の航空産業の育成に貢献しない。
そのため、現代では戦闘機のような最先端の装備は同盟国同士が互いにパートナーとなり、資金と技術を出し合って共同で開発することが一般的になっている。
当初は「日本主導の日米共同開発」が方針だった
防衛省は次期戦闘機を日本の三菱重工業を中心に国産化する体裁をとったが、一方で、その下請けとして外国の軍事産業の協力を得ることにした。つまり、外国の技術の提供を受けながら国産の戦闘機を開発するという、「国産主導の共同開発」という方法が選択されたのである。
2020年12月、米国のロッキード・マーチンが機体の設計やシステム統合を担当するパートナーとして選ばれた。戦闘機の開発には武器やそれを管理するソフト、センサーなど、それぞれ優れた技術を統合する「システム統合」と呼ばれる技術が必要不可欠だが、実戦の経験や戦闘機の開発経験が乏しい日本の防衛産業はこの分野の技術は不得手である。そのため、経験豊富な米国の産業に支援を求めたのである。
一方、次期戦闘機の新型エンジンを英自動車メーカーのロールスロイスと日本のIHIが共同で開発することや、BAEシステムズが「ジャガー」と呼ばれるセンサーを日本と共同開発することが決まり、英国の軍事産業も次期戦闘機を支えるサブシステムの開発に協力することが決まった。
こうして次期戦闘機は一時、「日本主導の日米共同開発」という方針が固まり、英国はそのプロジェクトを側面から支援するという役回りで計画が進んでいたのである。
ところが、その計画を変更せざるをえない事情が生じ、結果的に英国のBAEシステムズが米国のロッキード・マーチンが担うことになっていた役割を肩代わりすることになった。次期戦闘機は初の日英共同開発へと大きく舵を切ることになったのである。
米国が身を引いた理由、英国の「テンペスト」計画
日本が戦闘機のような主力装備を米国以外の国と共同開発したことは過去に例がない。しかし、それは日本の新しいパートナーとして、英国の存在感が急速に高まっていることの表れでもある。
米国はなぜ身を引いたのか。それは、日英共同開発が正式に発表されない以上、推測するしかない。