最新記事

環境

「扇風機もない職場はかまど」 インドの工場労働者を40度超えの熱波が直撃

2022年6月13日(月)10時09分

移民労働者を支える共同組織アージービカ・ビューローの幹部、マヘシュ・ガジェラ氏は「労働者の休憩室やウォータークーラー、午後の休憩時間などが設けられていないことについて、われわれは一貫して問題提起してきた」と言う。

だが「労働当局者や地域行政は、暑さ対策プランは勧告に過ぎないため、強制執行はできないと言う。工場内部は機械によってさらに温度が上がり、労働者は苦しんでいる」とガジェラ氏は語った。

米シカゴ大学エネルギー政策研究所の2018年の調査では、10日間の平均気温が1度上がると、工場労働者の欠勤確率は最大5%高まることが分かっている。

太陽光発電に補助を

この夏は猛暑でエアコンの使用が増え、電力需要が急増。電力不足が広がる中、多くの州は家庭向けの電力供給を優先し、工業拠点の停電時間を長くしている。

多くの企業は代替的な電源を持たず、停電の間は電力を一切断たれてしまう。一部企業からは、ソーラーパネルなどの取り付けに政府が補助を出すよう求める声も上がっている。勤務開始時間を早め、労働者が猛暑の午後に休めるようにする対策も検討されている。

今のところ、ほとんどのインド国民はモンスーンが来て気温が下がるのを待っている。生地プリント工場で働くヤダブさんの願いは、とりあえず工場に扇風機が設置されることだ。「扇風機と冷たい水があれば助かる。大きな変化には何年もかかるかもしれないが、まずはそこからだ」──。

(Anuradha Nagaraj記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・クジラは森林並みに大量の炭素を「除去」していた──米調査
・気候変動による世界初の飢饉が発生か 4年間降雨なく、昆虫で飢えをしのぎ...マダガスカル
・地球はこの20年で、薄暗い星になってきていた──太陽光の反射が低下


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

カイロでのガザ停戦交渉に「大きな進展」=治安筋

ビジネス

NY外為市場=ドル全面安、週内の米指標に注目

ワールド

デンマーク国王、グリーンランド訪問へ トランプ氏関

ワールド

米・ウクライナ鉱物協定案「より強固で公平に」=ゼレ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 8
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中