1997年以降に新宿二丁目に集った「その他」はテックの恩恵を示す好例【プライド月間に知りたい話】
ストレートとトランスジェンダーの垣根を取り払う
ストレートの人向けとしてリリースされたアプリが、その市場のユーザーと潜在的ユーザーを取り込むには差別化を印象付けることが必須だ。
打開策を見出そうとしたのが、英国発のマッチングアプリ「Butterfly(バタフライ)」。2019年10月、イギリスに拠点を構えるMinns(ミンス)から、トランスジェンダーの人と付き合うことに興味があるすべての性別の人を対象にローンチされた。
従来のマッチングアプリでは、「トランスジェンダーの人々から(ストレートの人へ)送られたメッセージの拒否率はとても高かった」と、Minnsのデビッド・ロナルド・ミンス氏。
「Butterfly」を使い始める際にユーザーはまず、セクシャリティを24通りから選ぶ。さらに細分化された10のオプションからフィットするものを選択するが、これはいつでも変更できる。
たとえば、登録時には自分の性を言葉にできるほど固まっていない場合は「Questioning(自分のジェンダーや性的指向を探している人)」で登録し、後にセクシャリティを自覚したら「MTF(身体的には男性であるが性自認が女性)」に。
性自認(こころの性)を「男性」、または「女性」に固定せず、状況や心理状態で性の認識が流動的に行き来する「ジェンダーフルイド」に柔軟に対応する機能だ。
「何か新しいものの真の必要性」を表現する人々が集うコミュニティへ
「Butterfly」は2019年9月に、英国のデイビッドミンス社からリリースされたマッチングアプリ。英国、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、イスラエル、ニュージーランド、スペイン、米国を含む12か国で提供され、インドでは2020年1月6日にリリースされた。
アメリカでは、第3の性別であることを公言するのは人口のわずか1%ながら、Butterflyのコミュニティでは、彼らの意思表現は、はっきりとなされている。
Butterflyの目標は、「その他」に属する人を融合することだ。
インドに注力する背景
Butterflyが特にインド市場に注力する背景にはその「最悪」な状況がある。
2011年に実施されたインドの国勢調査では、性別の申告に「男性」「女性」「その他」の3つの選択肢があった。これは、二元的でない性自認を持つ人々のデータを収集する、インド初の試みだった。
この調査から、インドのトランスジェンダー人口を48万7803人と推定している。13.8億人の全人口に比べればわずかな割合に見えるが、同性愛ヘイトの事件が頻発する環境では、国にデータを取られることを恐れ正直に申告するのをためらった人もある程度いると考えられる。
一方、トランスジェンダーというだけで親に見捨てられる子ども、解雇される人、最悪の場合、殺されたり自殺者を生むほどの社会的圧力が存在する。
2014年4月に、インド最高裁は「第三の性」を認めることを発表したものの、要は形だけ。2018年に、インド最高裁が同性間の性行為を禁じる法律は違憲として、ようやく「犯罪」のレッテルは消えたが、本当にそれだけ。真の意味で、制限が撤廃されたわけではない。2019年に議会で承認されたトランスジェンダー法は、トランスジェンダーの人々を「二流の市民」とみなしている。
インドの社会は「寛容」と言うには、まだまだ状況が追いついていない。そして、この点については日本も通じる部分がある。
自分のセクシャリティをまだはっきりと自覚していないトランスジェンダーを含め、「その他」の人たちのコミュニティが安全にあり続けるための足場固めは、インドだけでなく日本でも必要なことだろう。
国是ももちろん大切だけれど、それは一旦置いといて。自分がどうありたいか、誰が好きか、それだけのことなのだから。
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