完全に合理性を失った「中国ゼロコロナ」、外資・外国人の「大量脱出」が始まった
Beijing’s ‘Slow-Motion Lockdown’
中国中央電視台(CCTV)本部前の臨時検査会場 CARLOS GARCIA RAWLINSーREUTERS
<中国共産党政権による「ゼロコロナ」政策の固持で、規制は強まる一方。閉塞感や経済的損害で外国人の大脱出が始まった>
じわじわと追い詰められている。北京に住む私たちの多くは今、そう感じている。
新型コロナの感染拡大を受けてロックダウン(都市封鎖)に入った当初の上海と違って、北京では食料不足などの悪夢を(少なくとも現時点では)回避できているのだから、私たちはラッキーだ。とはいえ、ここでは段階的に規制が強化される「ソフト・ロックダウン」が進行している。
陰性者で、感染者や感染が疑われる人との接触がなければ、市内の移動は可能だ。だが私が暮らす地区では日ごとに、行ける場所もできることも減り、移動手段の確保が難しくなっていると感じる。
ある友人に言わせれば、これは「スローモーションのロックダウン」だ。北京の現状は「ニシキヘビに締められる」苦しみに似ている。
中国当局は確かに、上海の混乱から学んでいる。
3月28日にロックダウンが始まった上海では50日間、不安や絶望、怒りに満ちた争いが続いた。一部店舗の段階的な営業再開が認められたのは5月16日。6月中に規制を全面解除する方針も発表された。
北京での新型コロナの感染者数は、以前の上海よりはるかに少ない。それでも、不安や閉塞感は募っている。
学生の抗議と暗い予測
北京大学の万柳キャンパスでは、学生たちの不満が高まっていた。敷地内の限られた区域しか移動できず、来訪は禁止。寮からの外出やデリバリーの利用も禁じられた。
5月15日夜、金属製の「ロックダウンフェンス」が設置されたのを見て、彼らは行動に出た。最大300人が大学当局者に詰め寄り、フェンスの撤去を要求。設置の目的は学生を教職員から隔離することで、教職員側は移動の自由がはるかに大きい。
「壁を壊せ! 壁を壊せ!」。何人かがそう唱えてフェンスの一部を破壊した後、学生たちは解散させられた。
こんな小規模で非暴力的な抗議活動でさえ、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席にとっては懸念すべき「前兆」だ。
地球上のほぼ全ての国が共存路線に舵を切っているなか、習は北京での「ゼロコロナ」政策の成功を、自身のレガシーと明確に結び付けている。実際、中国のゼロコロナ政策はもはや公衆衛生戦略の枠を大きく超え、完全なイデオロギー運動と化している。
5月5日、習は中国共産党の最高意思決定機関、政治局常務委員会の会議を開き、規制措置のさらなる強化を呼び掛けた。これまでと異なり、新型コロナ対策と経済成長の必要性のバランスについて触れることはなかった。