最新記事

中国

完全に合理性を失った「中国ゼロコロナ」、外資・外国人の「大量脱出」が始まった

Beijing’s ‘Slow-Motion Lockdown’

2022年5月25日(水)18時19分
メリンダ・リウ(本誌北京支局長)
北京コロナ検査会場

中国中央電視台(CCTV)本部前の臨時検査会場 CARLOS GARCIA RAWLINSーREUTERS

<中国共産党政権による「ゼロコロナ」政策の固持で、規制は強まる一方。閉塞感や経済的損害で外国人の大脱出が始まった>

じわじわと追い詰められている。北京に住む私たちの多くは今、そう感じている。

新型コロナの感染拡大を受けてロックダウン(都市封鎖)に入った当初の上海と違って、北京では食料不足などの悪夢を(少なくとも現時点では)回避できているのだから、私たちはラッキーだ。とはいえ、ここでは段階的に規制が強化される「ソフト・ロックダウン」が進行している。

陰性者で、感染者や感染が疑われる人との接触がなければ、市内の移動は可能だ。だが私が暮らす地区では日ごとに、行ける場所もできることも減り、移動手段の確保が難しくなっていると感じる。

ある友人に言わせれば、これは「スローモーションのロックダウン」だ。北京の現状は「ニシキヘビに締められる」苦しみに似ている。

中国当局は確かに、上海の混乱から学んでいる。

3月28日にロックダウンが始まった上海では50日間、不安や絶望、怒りに満ちた争いが続いた。一部店舗の段階的な営業再開が認められたのは5月16日。6月中に規制を全面解除する方針も発表された。

北京での新型コロナの感染者数は、以前の上海よりはるかに少ない。それでも、不安や閉塞感は募っている。

学生の抗議と暗い予測

北京大学の万柳キャンパスでは、学生たちの不満が高まっていた。敷地内の限られた区域しか移動できず、来訪は禁止。寮からの外出やデリバリーの利用も禁じられた。

5月15日夜、金属製の「ロックダウンフェンス」が設置されたのを見て、彼らは行動に出た。最大300人が大学当局者に詰め寄り、フェンスの撤去を要求。設置の目的は学生を教職員から隔離することで、教職員側は移動の自由がはるかに大きい。

「壁を壊せ! 壁を壊せ!」。何人かがそう唱えてフェンスの一部を破壊した後、学生たちは解散させられた。

こんな小規模で非暴力的な抗議活動でさえ、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席にとっては懸念すべき「前兆」だ。

地球上のほぼ全ての国が共存路線に舵を切っているなか、習は北京での「ゼロコロナ」政策の成功を、自身のレガシーと明確に結び付けている。実際、中国のゼロコロナ政策はもはや公衆衛生戦略の枠を大きく超え、完全なイデオロギー運動と化している。

5月5日、習は中国共産党の最高意思決定機関、政治局常務委員会の会議を開き、規制措置のさらなる強化を呼び掛けた。これまでと異なり、新型コロナ対策と経済成長の必要性のバランスについて触れることはなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、プーチン氏との月内会談示唆 ウクライナ

ビジネス

中国債券、外国投資家の保有が1月に減少=人民銀

ワールド

マスク氏は宇宙関連の政府決定に関与しない=トランプ

ワールド

ECB、在宅勤務制度を2年延長 勤務日の半分出勤
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 2
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「20歳若返る」日常の習慣
  • 3
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防衛隊」を創設...地球にぶつかる確率は?
  • 4
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 7
    祝賀ムードのロシアも、トランプに「見捨てられた」…
  • 8
    ウクライナの永世中立国化が現実的かつ唯一の和平案だ
  • 9
    1月を最後に「戦場から消えた」北朝鮮兵たち...ロシ…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 2
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    【徹底解説】米国際開発庁(USAID)とは? 設立背景…
  • 7
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 8
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 9
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中