完全に合理性を失った「中国ゼロコロナ」、外資・外国人の「大量脱出」が始まった
Beijing’s ‘Slow-Motion Lockdown’
ただし、悪いニュースばかりではない。今のところ、北京で1日に確認される新規感染者数は数十人程度だ。
上海では一部の工場が操業を再開し、感染者数は減少傾向で、市当局は住宅群の隔離解除の加速を宣言した。それでも、何週間も厳しいロックダウンや透明性の欠如にさらされた市民の警戒心は消えない。「これだけ嘘をつかれた後で、あなたたちの言うことを信じろというのか」。ソーシャルメディアの微博(ウェイボー)には、そんなコメントが投稿された。
中国国家統計局は5月中旬、ゼロコロナ政策の経済的損害の切迫度が増していることを示す数字を発表した。4月の小売売上高は前年比11.1%減少し、失業率はパンデミック発生以来、最高水準の6.1%。文化観光省によると、4月30日からの5連休中の国内観光収入は前年同期比で43%減少した。
中国のGDP成長率は4~6月期に縮小し、今年後半から回復に向かうとみられる。今年の成長率目標は5.5%前後だが、達成は厳しそうだ。
時間がたたなければ、表面化しない打撃もあるだろう。在中米国商工会議所のマイケル・ハート代表は先日、移動制限の長期的影響を警告した。
複雑なビザ取得手続きや入国者の長期の隔離措置などが新規投資プロジェクトの障害になっていると、ハートは米メディアで指摘した。「新規投資の事前準備が進んでいないため、中国ではこれから2年、3年、4年後に投資が大幅に減ると予測する」
外国人が「大量脱出」する恐れが
在中米国商工会議所が先頃発表した調査によれば、中国で働く外国人が、新型コロナ対策やロックダウンが原因で「大量脱出」する恐れもある。
確かに、最近は送別会が増える一方という印象だ。中国を相次いで去る友人の荷造りの手伝いに、筆者は追われている。中国では来年、北京など10都市でサッカーアジアカップが開かれる予定だったが、新型コロナの感染拡大懸念を理由に、開催を返上するとの発表もあった。
外国人が中国にいづらくなったと感じても、問題とみられていないのでは? 昨年後半、外国人の大量脱出について取材を始めた時点で、大きな疑問だったのはその点だ。
当時、話を聞いた在中国EU商工会議所のイエルク・ブトケ会頭はこう警告した。欧米企業が中国との取引や中国事業を継続しても、在留外国人が続々と出ていけば、創造性や革新性は損なわれる──。
ブトケの見方は今や、さらに暗い。パンデミック以前に在留していた外国人の半数が既に中国を離れたとみられ、現状のままでは残りの半数もいなくなるだろう、と。