「台湾有事には軍事介入」 バイデンの発言は失言か、意図したものか
バイデン政権はロシアのウクライナ侵攻に際し、ウクライナ側に何十億ドルもの軍事支援を提供するとともに、中国には台湾向けに同じような行動を取ることを考えるなというメッセージを発している。
同時にバイデン政権は、核兵器を保有するロシアとの直接的な衝突が起きることを警戒し、ウクライナ支援の項目には、たとえ大量の殺傷兵器を供与するとしても、米軍の直接関与は入らないとの方針を明確に打ち出してきた。
それでも今回の台湾問題に関するバイデン氏の発言は、米中が衝突する事態を巡る地域の懸念を高めかねない。米国在台湾協会台北事務所(米政府の台湾に対する事実上の外交窓口)所長を務めたダグラス・パール氏は「この発言は地域の安定と台湾の安全を維持する上で、有益だとは思えない」と不安を口にした。
逆効果の懸念
バイデン政権は表向き、「1つの中国」政策から逸脱していないと主張しているが、中国と米国の双方とも台湾への態度は変わってきている。
中国側では、かつてほとんど見られなかった中国空軍機による台湾の防空識別圏(ADIZ)侵入が近年になって劇的に増加。中国政府の台湾に対する口調は一段と厳しくなった。
一方、米政府は台湾との交流を深め、武器売却を継続するとともに、今月には米国務省がウェブサイトにおける台湾の概要説明で、台湾の独立は支持せず自国の一部だとする中国の見解を認める表記がひそかに削除された。
こうした中で米シンクタンク、ジャーマン・マーシャル基金の台湾専門家、ボニー・グレーザー氏は、バイデン氏の発言は、中国を抑止するどころか、その反対の効果を及ぼしかねないと警鐘を鳴らした。
グレーザー氏は「目的は正しいと思うが、米国の政策を巡る混乱が抑止力を損なってもおかしくない。われわれが抑止を目指す(中国の)攻撃を招く恐れがある」と話す。
台湾に関する「あいまい戦略」の廃止を提唱する野党・共和党議員も、バイデン氏の発言が見るからに行き当たりばったりだと追及している。
米保守系シンクタンク、ヘリテージ財団のディーン・チェン氏は、米政府があいまい戦略を放棄するなら速やかに実行するのが最善だと強調。バイデン氏の発言に触れて「今のままなら、中国に時間的余裕を与えてしまう可能性が出てくる。米国が戦略的な明快さを出す方向にゆっくり進んでいくなら、中国はそうなる前に行動を起こしたくなるのではないか」と述べた。
(Michael Martina記者、David Brunnstrom記者)
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