「台湾有事には軍事介入」 バイデンの発言は失言か、意図したものか
政治の世界では、物事の本質をあえて口にすると失敗するという格言がある。写真は同日、東京・迎賓館で記者会見に臨むバイデン米大統領。代表撮影(2022年 ロイター)
政治の世界では、物事の本質をあえて口にすると失敗するという格言がある。その意味で、バイデン米大統領が台湾問題で率直な発言をしたのはしくじりだ、というのが批判派の見方だ。
バイデン氏は大統領として初のアジア歴訪中の23日、中国が台湾に侵攻した場合、米国が軍事的に関与する考えを表明。台湾有事に米国がどう対応するかは「意図的に不透明にしておく」という長らく堅持してきた外交戦略と一線を画する姿勢を見せた。
もっともバイデン氏は、これまでも何度か即席で発した言葉で、個人的な気持ちとしては台湾防衛に傾いていることを示唆している。
長年の「あいまい戦略」放棄に賛成する人々の中からも、バイデン氏を批判する声が聞かれる。同氏が台湾に正式な軍事力提供を請け合わず、この問題をいたずらに紛糾させ、中国の行動意欲をかき立てる危険を冒しているという理屈からだ。
ただ、米シンクタンク・外交問題評議会のデービッド・サックス氏をはじめとする何人かの専門家は、バイデン氏が外交政策全般のベテランである事実や、発言の場の隣には日本の岸田文雄首相がいたこと、そしてこれがロシアによるウクライナ侵攻後だった点を踏まえると、決して失言をしたわけではないと分かるとみている。
サックス氏は「これは、ヘマではなかったと考えている」と言い切った。
残されたあいまいな部分
バイデン氏は、ある記者から中国が台湾に侵攻した際に米国が軍事的に関与するのかと聞かれ、「イエス」と返答。その後、ホワイトハウスとオースティン米国防長官はすかさず、米国の立場に変更はないと火消しに走った。
オバマ政権時代に米国の東アジア外交責任者を務めたダニエル・ラッセル氏は「バイデン氏は、中国による台湾への侵攻に米国が対応すべきだとの信念を持っていることは明らかにしている。彼があいまいにしているのは、具体的な対応方法と台湾防衛に関する米国のコミットメントの内容だ」と解説する。
バイデン氏は特に、軍事的関与が米軍の戦闘地域への派遣を意味するのかどうかについて、相当大きな解釈の余地を残したままだ。