実はアマゾンも危ない? 巨大テック企業「無敵神話」を疑え
一方で、ショッピングモールのデジタル版ともいえるのが、eコマースだ。インターネット上では、買い物客はクリックするだけで全く別の選択ができる。さらに力がある売り手であれば、競合するプラットフォーム経由や直接顧客にアプローチすることも可能だ。電子商取引のプラットフォームでは、これを防ぐことは難しいという。
著者は、実店舗を持つ事業者がeコマースに参入した場合、アマゾンのeコマース事業よりもはるかに高い利益をあげていることを指摘する。オフラインのビジネスモデルは驚くほどレジリエントなのだ。
時代に逆行するかのようにアマゾンが書店や食料雑貨店といったリアル店舗に参入したのは、ここに挑もうとしたのであろう。実際にコロナ危機の直前まで、経営不振のインターネットショッピング業者が、収益改善のためにモールの直販店の開設を考えていたというほどだ。
ただし、実店舗とeコマースの相性がいいのは、カー用品など特定の専門分野のある場合であり、そもそも顧客の囲い込みができているかが重要だ。
イーベイのようの単純に買い手と売り手をつなぐもの、キャスパーのように売り手であり生産者でもある場合、アマゾンは、そのハイブリットモデルだ。このようにeコマース企業にはさまざまなビジネスモデルがあること、なによりもどのビジネスモデルも、業績不振が長く続いていることも見逃してはいけない。
FAANGが「プラットフォームの妄想」に当てはまらないという事実
日本では「GAFA+Netflix」と呼ばれている5つの巨大IT企業が、「FAANG」としてメディアで取り上げられたのは2013年。CNBCのテレビ番組「マッド・マネー」のパーソナリティ、ジム・クレイマーによるものだった。
そのFAANGは2018年に短い停滞があったものの、2020年のパンデミックではその勢いを加速させた。
一般的に同じ業界内では同じような利益率を示し、似たような事業構造や競争構造を持つ産業であれば、同等の収益性を持つことが多い。しかし、これら5社の経営指標と財務指標は、標準から逸脱していると著者は指摘する。
アップルを除く4社の株式のうち、「S&P500」企業の収益性の平均から2社は大きく上回り、2社は大きく下回っている。後にFAANGに名を連ねたアップルは、平均を大きく上回るグループに迫る業績をあげた。
これらの企業を見るときは、それぞれの構造的な優位性と事業の多様性、複雑性を理解し、強みと弱みを際立たせていることが大切だ。
しかし、多くの企業や経営者は、自社がFAANGに加わることを夢見ては憧れ、追いかけ続けている。このことこそが、「プラットフォームの妄想」であると著者は強く警鐘を鳴らす。つまり、自ら喜んで二番煎じになろうとしている点に手厳しい。