ロシアがアゾフターリに降らせたのは白リン弾か【ファクトチェック】
Fact Check: Does Video Show Russia Use Phosphorus Against Azovstal Plant?
ロンドン大学キングズ・カレッジのロシアの防衛政策の専門家、ロブ・リーは製鉄所の動画をツイッターに投稿し、「ロシア軍はアゾフスターリ製鉄所に向けて、グラート自走多連装ロケット砲から9M22Sクラスター焼夷ロケット弾を発射したと報じられている」とツイートした。
兵器関連の調査会社であるアーマメント・リサーチ・サービシーズによると、9M22Sロケット弾は、マグネシウムとテルミット(アルミニウムと酸化鉄の粉を混ぜたもの)を主成分とし、燃料タンクなど可燃性の標的を炎上させるために使用される。同社によれば、白リン弾もこうした攻撃に使えるが、実戦では白リン弾はたいがい標的を照らすか、煙幕を張るのに使われるという。
ローレンスも「白リン特有の煙が見られないことから、マグネシウムとテルミットとも考えられる」と話す。「いずれにせよ、攻撃される側にとっては大した違いはない。どっちが飛んで来ても、おぞましい被害が出る」
また、多連装ロケット砲から発射されたのなら、「確かに動画のような飛び方になる」と、ローレンスは付け加えた。
焼夷兵器のむごさは変わらず
結局のところ、焼夷兵器が使用されたのはほぼ確実だが、白リン弾とは断定できないということだ。それでも、こうした動画が公開されるたびに、憶測が飛び交い、情報や誤情報がメディアを賑わす。
本誌はロシア国防省にもコメントを求めたが、回答は得られていない。
ウクライナとロシア以外の複数の国々の政府関係者は、ロシア軍が白リン弾を使用した可能性を問題にしているが、動画だけでは根拠不十分で、さらなる検証が必要だ。よって本誌のファクトチェックでは、これは事実でも虚偽でもない「要検証」扱いとなる。白リン弾に限らず、焼夷兵器の使用には引き続き国際社会の厳しい監視の目が必要なことは言うまでもない。