ロシアがアゾフターリに降らせたのは白リン弾か【ファクトチェック】
Fact Check: Does Video Show Russia Use Phosphorus Against Azovstal Plant?
ただし、国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)によると、攻撃目的ではなく、主として発煙弾、照明弾、信号弾として設計されている焼夷兵器は、この議定書の対象外で、白リン弾も規制対象になっていない。
またHRWによると、議定書Ⅲは人口密集地に空から焼夷兵器を投下することを禁止しているが、「民間人が密集している場所を明確に避け、可能な限り民間人の被害を防ぐ措置を取って」地上から発射することは禁止されていない。
ただし白リン弾は、議定書Ⅲの対象外ではあっても、「他の攻撃用の焼夷兵器と同様、むごたらしい人的被害を及ぼす」と、HRWは警告している。
「骨まで焼き、体内でくすぶり、治療後数日経ってからも、空気に触れると、再発火することがある」という。
アゾフスターリ製鉄所の動画については、明らかに白リン弾だと主張する人たちがいる一方で、焼夷弾にはいろいろな種類があり、何でもかんでも白リン弾と決めつけるのは誤りだとの指摘も聞かれる。
専門家は煙のなさに首を傾げる
「白リンは空中で自然発火するため、多様なタイプの弾薬に焼夷剤として用いられる」と、米疾病対策センター(CDC)は解説している。
動画では、空中だけでなく、地上に落ちてから発火したように見えるものもある。これまでにロシア軍の白リン弾使用の証拠として公開された動画には、白煙だけが上がっているものや、空中で爆発しているものなどがあった。
本誌は軍事教育で知られる英クランフィールド大学の専門家に動画を見てもらい、見解を聞いた。
爆発物専門の化学者であるジャクリーン・アカバン教授によると、「空中で爆発的に燃え、白い炎を上げているので、白リンと考えられる」という。「煙はあまり上がっていないから、白煙を出す成分は混合されていないのだろう。純粋な白リンかもしれない」
一方、爆発物と弾薬を専門とするトレバー・ローレンス上級講師は、「白リンを詰めた弾薬が近くから発射されたとも考えられるし、時限信管を付けて、動画で見られるように空中で爆発させたとも考えられる」と言う。「映像を見る限り、白リンが使われた可能性が高いが、白リン弾ならもっと煙が出るはずだ。焼夷弾であることは確かだが、白リン弾かどうかはこの動画では分からない」