金正恩は究極の「無ワクチン」実験をやる気なのか
North Korea's Kim Jong Un Begins Ultimate No-Vaccination Experiment
北朝鮮の発熱患者の数は爆発的に増えており、16日の午後6時からの24時間で、新たに23万人以上の発熱が確認された。実際はこれよりはるかに多くの発熱患者がいるのに国営通信社が社会不安を起こさないために少なく報道している可能性もある。一方、金正恩の「ノーワクチン政策」は、これまで2年間独自路線を貫いてきた手前、今更退けないという政治的な決断かもしれない。
韓国で発表された報告書によれば、北朝鮮は2021年7月、ワクチンの公平な分配を目指す国際的な取り組み「コバックス」を通じて供給される予定だったが、アストラゼネカ製のワクチンはいやだと受け取りを拒否。またユニセフ(国連児童基金)によれば、その2カ月後には、中国製ワクチン数百万回分の受け取りを拒否した。
ここ数日だけでも、WHOや韓国、中国が北朝鮮に支援の申し出を行っているが、北朝鮮は返答していない。
食糧危機も深刻
WHOのテドロス・アダノム事務局長は、北朝鮮でさらに感染が拡大するリスクを「深く憂慮している」と述べた。「国民がワクチン接種を受けておらず、また多くの国民が基礎疾患を抱えているため、重症化や死亡につながるリスクがある」ためだ。
テドロスはまた、WHOとして北朝鮮にデータや情報の共有を求め、検査キットや医薬品、ワクチンなどを供給する準備ができていることを伝えたことも明らかにした。
国連の2021年の報告によれば、北朝鮮では食糧不足が原因で、人口の42%強を占める約1090万人が栄養不良の状態にある。そしてこの食糧危機は、国際的な制裁や金正恩の国境封鎖によって、さらに悪化しているという。
WHOが持続不可能だと考えている、中国の「ゼロコロナ政策」とあわせて、北朝鮮の「ノーワクチン」方式もまた近隣諸国にとって深刻な懸念材料となっている。WHOは、複数種類の十分な量のワクチンを「可能な限り速やかに」供給する用意ができているとするが、北朝鮮は「政府による決定」でワクチン接種を拒んでいるという。