最新記事
日本社会

コロナ禍の失業で男性よりも女性の方が追い込まれた理由

2022年5月11日(水)09時45分
舞田敏彦(教育社会学者)

他の時期ではどうなのか、という疑問もあるだろう。2010年以降の3年間隔で、失業者数と自殺者数(月単位)の相関係数を算出すると<表1>のようになる。

data220511-chart02.jpg

どの時期でも男性の方が高かったのが、コロナ禍を含む3年間では逆転している。「失業→生活苦→自殺」という因果経路は、男性より女性で強くなっている。コロナ禍では、失職した層が違う。先に述べたように、販売やサービス業等の非正規雇用の女性だ。この中には、失職したら即生活破綻というギリギリの生活をしている人も含まれるだろう。たとえばシングルマザーだ。

こういう人たちに公的扶助の手が差し伸べられればいいのだが、日本の生活保護はあまり機能していない。コロナ禍でも生活保護受給者数の棒グラフは真っ平で、母子世帯にあっては減少の傾向すらある。母子世帯をターゲットにして、生活保護の削減が図られているのではないか、という疑いもあるくらいだ(「なぜ母子家庭への生活保護だけが減っているのか」本サイト2021年12月22日掲載)。

こういう理由から、女性の失業と自殺が強く相関するようになったことも考えられる。コロナ禍でダメージを受けているのは社会の弱い層で、公的支援の手も差し伸べられない。こうした問題の表れではないか。

まずは生活保護の運用実態について、外部による厳格な検証を行うべきだ。

<資料:総務省『労働力調査』
    警察庁『自殺の概要』

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中