コロナ禍の失業で男性よりも女性の方が追い込まれた理由
母子世帯への生活保護はコロナ禍で増えるどころか減少する傾向すらある Doucefleur/iStock.
<失業と自殺の相関関係は通常なら男性の方が強いが、コロナ禍ではそれが逆転し女性の方に強く出ている>
今年は何の行動制限もないゴールデンウィークだったが、新型コロナの感染拡大は予断を許さない状況が続いている。2020年春からのコロナ禍により、人々の暮らしは大きな打撃を被った。経済活動が停止し、失職して生活に困る人が増えた。公的扶助も不十分なために助けてもらえず、悲観して自らを殺める人も続出した。
自己責任を求める風潮が強い日本では、社会が不安定化するとこういう事態がしばしば起きる。それは、失業と自殺の時系列的相関関係で可視化できる。とりわけ男性では、両者は強く相関するのが常だ。働いて稼ぎを得ることへの期待が、大変に大きいためだろう。一般に社会変化の影響を強く受けるのは、女性より男性だ。
しかしコロナ禍以降、女性の自殺者数も大きく動いている。コロナ禍が始まる前年の2019年1月から2021年12月までの3年間の自殺者数を月単位で見ると、男性は1023~1341人、女性は433~899人という分布幅で、女性の方が大きく揺れ動いている。これが失業とどう相関しているかを見ると、これまでにない傾向になっている。<図1>は、この3年間(36カ月)のデータによる相関図だ。失業者数と自殺者数のマトリクスに、各月のドットを配置している。
失業者数と自殺者数がともに多い男性のドットは、上の方に位置しているが、両者の間に有意な相関関係はない。一方、女性の失業と自殺は係数+0.7151の強い相関関係にある。
上述のように、失業と自殺は男性で強く相関するのが常だが、コロナ禍の月単位のデータでは逆になっている。コロナ禍で失職したのは販売やサービス業の非正規雇用の女性が多く、生活に切羽詰まったシングルマザー等が多かったためかもしれない。