尹錫悦次期大統領は経済の「日本化」を回避できるか
WHAT IS SOUTH KOREA’S PRESIDENT-ELECT FACING?
日本の1人当たりGDP(購買力平価)は2000年代前半にアメリカの70%前後になり、20年以上にわたって同程度またはそれ以下の状態が続いている。韓国も 20年 にその水準に到達した。
問題は韓国が今後も成長を続け、日本型の「失われた数十年」を回避できるか、だ。
これは簡単なことではない。一見妥当な物理的資本投資に大した効果を期待できないことを考えればなおさらだ。
一方、1人当たりGDPがアメリカ8割以上というドイツの事例から別の方法も浮かび上がる。ドイツでは00年代初頭にハルツ改革と呼ばれる労働市場と福祉の改革が行われ、潜在GDP成長率の向上に貢献した。韓国でも労働生産性の向上と労働力の拡大、特に女性の活用に向けて類似の改革を実行する余地は十分にある。
35~39歳の女性労働力率はドイツが約80%なのに対し、韓国は約60%。韓国の女性労働力率はOECD加盟国で最低レベルで、 原因の1つは労働市場に柔軟性が足りないことだ。また、質が高くて手頃な価格の保育ケアの選択肢がないという事情もある。
一連の改革を実施しても、韓国が日本型の成長軌道を回避できるかはまだ分からない。だが、確かなことが1つある。尹の前には山ほど仕事がある、ということだ。
[執筆者] KEUN LEE
韓国・大統領国家経済諮 問委員会副会長。ソウル 大学特別名誉教授(経済 学)。国連開発政策委員 会メンバーやソウル大学 国際大学院教授などを経 て現職。
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