フィンランドとスウェーデンのNATO加盟に「待った」かけるトルコ エルドアンの狙いは?
事情に詳しいある関係者はもう少し楽観的で、トルコはスウェーデンと前向きな会話をしており、来週には代表団が訪問する道が開かれたと話した。もっとも北欧2カ国がトルコ大統領府に連絡を入れてから、エルドアン氏のアドバイザーから電話がかかってくるまで5日も経過している。
同関係者は「このように至る所で混乱が起きているが、加盟計画全体が停滞しているわけではない」と力説した。
北欧2カ国のトルコ向け武器禁輸は、トルコが2019年にクルド人武装勢力を攻撃するためシリア北部に侵入した際に発動された。トルコ側の言い分では、2カ国がNATOという安全保障協定に入るなら、これは不適切な措置になる。
また、トルコ国営テレビTRTは、スウェーデンとフィンランドはトルコが求めている33人の身柄引き渡しを認めていないと伝えた。33人は、トルコがテロリストとみなす組織に関係があるという。
スウェーデン議会の外交委員長は、この問題で解決策を見つけるのは可能だが、身柄引き渡し以外の方法になると反論。「欧州連合(EU)のテロ指定リストに基づいてテロリストと判定していない人々を国外退去させるなど全く考えられない」と語った。
強硬姿勢の裏側
欧州各国の外交官からすると、エルドアン氏が決裂寸前の姿勢を続けた後、結局は合意するという「交渉ぶり」をこれまでも目にしてきた。実際、エルドアン氏の下で予測不能な行動を取りながらも、トルコが戦略的に重要な同盟国で、独自の外交政策を推進しつつ、NATOの使命遂行に大きく貢献し続けている。
一方、米国とトルコの関係は、シリア問題やエルドアン氏のロシア接近、トルコの人権侵害や言論抑圧などによる5年間にわたる対立から最近ようやく改善の兆しが見えたところだった。だが、今回の問題でまた暗雲が立ち込めてしまった。
チャブシオール氏は18日にブリンケン米国務長官と会談したが、その前日にはトルコ系米国人の会合で「再び冷戦の風が吹き始めている」と口にした。
先の関係者によると、チャブシオール氏はエルドアン氏に背中を押されて対外的な強硬姿勢を見せている。しかし、やり過ぎれば、同盟国がトルコをのけ者にしかねない。
エルドアン氏が意識しているのも国内情勢だ。来年半ばまでに行う大統領・議会選挙で勝利できるどうか予断を許さなくなっているため、ナショナリスト勢力にアピールしているのだとみられる。
それでも米国は、問題解決に自信を持っている。ブリンケン氏は15日の会見で、トルコとフィンランド、スウェーデンの溝を埋める協議が続いており「NATO加盟手続きという面で、われわれは合意に達する、と私は強く信じている」と述べた。
(Jonathan Spicer記者、Humeyra Pamuk記者、Robin Emmott記者)
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