最新記事

中東

パレスチナ紛争再び激化の恐れ ラマダンにエルサレムで衝突

2022年4月19日(火)09時07分
イスラエル側との衝突後にエルサレム旧市街でのスローガンを叫ぶパレスチナ人ら

イスラム教のラマダン(断食月)に当たる現在、エルサレムでイスラエル警察とパレスチナ人が衝突している。写真はイスラエル側との衝突後にエルサレム旧市街でのスローガンを叫ぶパレスチナ人ら(2022年 ロイター/Ammar Awad)

イスラム教のラマダン(断食月)に当たる現在、エルサレムでイスラエル警察とパレスチナ人が衝突している。エルサレムにおける衝突がガザ地区での戦争に発展してから1年、再び両者の紛争激化に懸念が高まってきた。

イスラエル警察は15日、エルサレム旧市街地にあるイスラム教の聖地「アルアクサ・モスク」に突入。パレスチナ人の集団が、近くにあるユダヤ教の祈りの場「嘆きの壁」や警察に向かって爆竹や石を投げ始めことから、散会させるためだったとしている。パレスチナ人少なくとも152人が負傷した。

アルアクサ・モスクは、イスラエルが1967年の中東戦争で占領し、後に併合した東エルサレムの丘にある。ユダヤ人が「神殿の丘」と呼ぶこの地域は、数世代にわたる紛争の中で最も緊張をはらんだ場所だ。

パレスチナ政策世論調査センターのディレクター、カリル・シカキ氏は「エルサレムでの衝突は、幅広い暴動を引き起こす可能性が最も高い問題かもしれない。過去にもそうしたことがあった」と語る。

この2週間、パレスチナ人がイスラエル人を攻撃して死者を出したほか、ヨルダン川西岸でイスラエル軍がパレスチナ人を殺害し、緊張は既に高まっていた。今月はラマダンとユダヤ教の祝祭「過越の祭」、キリスト教の復活祭が重なるため、さらに緊迫している。

パレスチナのシュタイエ首相はアルアクサ・モスクでのイスラエル警察の行為について「聖月に礼拝者に対して残忍な攻撃を仕掛けた」と非難し、危険な兆しだと指摘した。

パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織「ハマス」の報道官は、イスラエルが警察を動員したことは報いを受けずに済まないと言明。「武器には武器を。力には力を。われわれは全力を尽くしてエルサレムを守る」と述べた。

昨年5月、ハマスがアルアクサ・モスクとシェイクジャラ地区からのイスラエル警察撤退を要求した後、パレスチナ軍はイスラエルにロケット弾を発射した。東エルサレムのシェイクジャラ地区では、裁判所がパレスチナ住民から土地を取り上げる可能性をちらつかせ、抗議行動や衝突につながっていた。

その後11日間にわたる戦争で、ガザ地区でパレスチナ人250人が、イスラエルでは13人が死亡した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

脅迫で判事を警察保護下に、ルペン氏有罪裁判 大統領

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ

ビジネス

テスラの中国生産車、3月販売は前年比11.5%減 

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-ユニクロ、3月国内既存店
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中