東部でロシアの勝利を許せばまたキーウが狙われる──ゼレンスキー
Russia Win in Donbas Would Threaten Kyiv, Influence Course of War: Zelensky
ドンバス地方にいるのはウクライナ軍の最強部隊、だから失えないとゼレンスキーは言う Marko Djurica-REUTERS
<ウクライナ屈指の軍隊が守るドンバスをロシア軍に突破された後の悪夢のシナリオ>
ロシア軍がウクライナ東部ドンバス地方への攻勢に力を入れる中、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ドンバスを失うことは首都キーウ(キエフ)にとっても危険なことだと述べた。
17日にCNNが放映したインタビューの中で、ゼレンスキーはドンバスを守ることの重要性を強調した。
「われわれにとり、ドンバスでの戦闘は非常に重要だ。重要である理由はいくつもあるが、何より大きいのは安全の問題だ。ドンバスに配置している部隊はわが国屈指の軍隊だ。大きな部隊だが、ロシアはそれを包囲し打ち倒そうとしている」とゼレンスキーは述べた。「ロシアにそれをさせず、一歩も後退しないことが重要なのはこのためだ。この戦いが戦争全体の行方を左右しかねない」
ゼレンスキーはまた、ロシア軍の攻勢がドンバスで打ち止めになるとは「信じられない」と述べ、もしロシア軍が東部で勝利すれば、再びキーウに向けて進軍するかも知れないと警告した。
ゼレンスキーはウクライナが首都防衛に成功したことに触れ、「われわれがロシア軍を撃退し、ロシア軍がキーウから、北部から、チェルニヒウから、そちらの方向から敗走したという事実は理解している」と述べた。だが、彼はこうも述べた。「だからといって、ロシア軍がドンバスを制圧できたらキーウに向けては進軍してこないとは言えない」
「ロシア軍の士気は低い」と専門家
侵攻の第1段階でウクライナ側の激しい抵抗に遭ったロシア軍はドンバスの制圧を目指している。ウクライナ東部での大規模攻勢に向け、数万人規模の部隊を準備しているところだ。
ドンバスでは、ウクライナからの分離独立とロシアへの編入を目指す親ロシア派武装勢力が活動しており、ロシアは彼らの言う「人民共和国」の独立を承認している。
本誌が取材した専門家らは、前線が絞られたことや開けた地形での戦いになっていることで、現在の戦況はロシアにある程度は有利だと語る。だがその一方で、ロシア軍は今も士気の低下や補給の問題を抱えているという。
「ロシア軍はすでに大きな犠牲を出しており、士気は(開戦した)2月24日と比べて大きく下がっている」と、防衛政策の専門家で外交評議会の非常勤主任研究員であるスティーブン・ビドルは本誌に語った。
「(ウクライナ)東部に投入される部隊の多くは、北部での攻勢に失敗し撤退してきた部隊で、これまでの戦闘で大きな被害を受けている。北部での経験から、戦闘への意気込みは大きく低下しているかも知れない」とビドルは語った。