ウクライナで目前に迫る史上最大級の戦車戦
Ukraine-Russia Set To Fight Largest Tank Battle in Europe Since World War 2
破壊されたロシアのT-72戦車(ロシアのキーウ郊外ドミトリフカ村) Oleksandr Klymenko-REUTERS
<ロシアが戦力を集中するウクライナ・ドンバス地方で、第二次大戦以来の大規模な戦車の衝突が始まる?>
ポーランドのマテウシュ・モラビエツキ首相は、ヨーロッパで第二次大戦以来最大の戦車戦が起きる可能性について、警告を発した。
ブルームバーグによれば、モラビエツキは4月11日、ベルギーのアレクサンダー・デクルオ首相との記者会見で、ウクライナ紛争において、戦車戦が「目の前に迫っている」と述べた。
モラビエツキは続けて、国際的な観測筋が、ロシアはまもなくウクライナ東部のドンバス地方で攻撃を開始すると予想していることを指摘し、EU加盟国にウクライナへのさらなる軍事支援を呼びかけた。
「最も決定的な戦いが始まろうとしている。それは同時に、この地域における第二次大戦以来最大の戦車戦になるだろう」と、モラビエツキは語った。
モラビエツキが予言するように、今後、ドンバス地方でウクライナとロシアが衝突する場合、それは第二次大戦中の1943年7月5日に始まったドイツ軍とソ連軍による「クルスクの戦い」を思わせるものになるかもしれない。
第二次大戦の壮絶な戦い
史上最大の戦車戦として知られるクルスクの戦いは、前年にスターリングラード攻防戦でソビエト赤軍に敗れたナチス・ドイツにとって、東部戦線を制圧する最後のチャンスだった。モスクワから南に450キロほど離れたロシア西部の都市クルスクに、重砲、戦車、100万人以上の兵士が集結し、1週間に渡って血生臭い戦いが繰り広げられた。
ドイツはクルスク戦線に50万人を超える兵員、迫撃砲と大砲1万門、航空機2500機、戦車2700両を集結させたという。ソ連軍は兵員100万人以上、大砲と迫撃砲2万門以上、航空機2650機、戦車3600両でドイツ軍に立ち向かった。赤軍はさらに戦車1500両を配備していたとされる。
この戦いにおけるソ連側の死傷者は80万人、ドイツ側の死傷者は20万人と推定されている。ドイツ軍は赤軍の防御を突破できずに後退を余儀なくされ、連合軍がシチリア島に上陸して新たな戦線を開いたところで、戦いは終了した。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシア政府はウクライナ東部に数万人の兵力を集結させており、かねて宣言しているようにドンバス地方の「完全解放」を目指す可能性が高いと警告している。
自国からの補給線が短くなったおかげで、ロシアは東部地域に重装備の部隊をすべて展開できるようになった。このような伝統的な戦争形態でこそ、ロシア軍の軍事的優位性が生かされるとみられている。