最新記事

中国

上海ロックダウン...「闇」の食料品店、感染児童を親から隔離、飼い犬を殺処分

Food Shortages Shake Shanghai

2022年4月11日(月)16時55分
ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌副編集長)
上海の検査場

上海の検査場では防護服姿のスタッフが市民を誘導 ALY SONGーREUTERS

<止まらない感染拡大で全市が封鎖された。以前と違って物流がなぜか機能不全に陥り、住民は食料不足に。ゼロコロナ政策への支持が薄れ、政府への不満が噴き出している>

上海が4月初旬、全面的ロックダウン(都市封鎖)に突入した。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて市内を半分ずつ、時期をずらして封鎖する措置を実施したが、抑え込めなかったせいだ。

特定の地区や集合住宅が対象の限定的封鎖が繰り返されていたため、既に3週間以上もロックダウン状態の住民もいる。

ほかの多くの国に比べて、中国のロックダウンは厳格だ。外出が完全に禁止されたり、数日に1回しか買い物に出掛けられない場合もある。

中国では新型コロナウイルス感染者が増え続け、その数はおよそ5日ごとに倍増。感染拡大の中心が上海で、全国の新規感染者数の80%以上を占めている。

上海市当局が行う義務的な大規模検査では、無症状感染者が圧倒的多数だ。検査数がより少ない他の地域では、把握されていない感染者がかなりの数に上ると考えられる。

公式発表では、死者数は今もごく少ないが、高齢者施設での死亡者数は実際より少なく報告されている可能性がある。

もっとも、上海市民の多くにとって最大の懸念は新型コロナではなく、食料不足だ。

以前は、ロックダウン中もサプライチェーンや食料品宅配が(民間業者であれ、政府支給のものであれ)比較的問題なく機能していた。だが、現状は最悪だ。

スーパーの棚は空っぽで、政府の物資配達は不十分。民間の宅配サービスには利用者が殺到し、オンラインで注文するには早起きして、受付中止までに滑り込めるよう祈るしかない。

不衛生な食材を口にして食中毒になるケースも発生している。

野菜をより長く持たせ、賞味期限が過ぎた食品を調理する方法を求めて、市民はオンラインで情報交換し、冬の間に買いだめをした人々が「闇」の食料品店をオープンする一方、禁を破って買い出しに行く住民もいる。

中国では水道水が飲用に適さず、大抵の家庭は飲料水の定期配達が頼み。浄水器を備えているのは、一握りの富裕層だけだ。煮沸すればバクテリアは除去できるが、その他の汚染物質は取り除けない。

今回の上海のロックダウンで、物流面が機能不全に陥った理由は不明だ。

一因は、当局の一貫性のない措置かもしれない。いつ何がどう変わるか、宅配サービス業者や商店は確信を持てない。

上海を孤島状態に保とうとする動きも、陸上輸送体制に影響を与えている。

一部のトラック運転手が2週間の隔離措置を迫られ、運賃は急騰中。最高2000人民元(賃金水準が低い輸送業界では、かなりの金額だ)の特別手当なしには上海へ行かないと、運転手らは主張している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中