最新記事

ウクライナ情勢

プーチンが動かす傭兵集団「ワグネル」の汚い役割

Who Are the Wagner Group? Putin's Private Army Fighting In Ukraine

2022年4月6日(水)15時39分
ジャック・ダットン、イザベル・ファン・ブルーゲン

インターネットメディア「インターセプト」は3月31日、ワグネルの傭兵たちが、シリアなど自分たちが作戦を展開している国々で、さらなる戦闘員を採用していると報じた。また本誌は3月29日に、ワグネル・グループがウクライナ東部に1000人の傭兵を投入予定だと報じた。ウクライナ軍も3月に入ってから、首都キーウ(キエフ)近郊で、ワグネルの傭兵たちと複数回にわたって衝突したことを報告していた。

英情報機関・政府通信本部(GCHQ)のジェレミー・フレミング長官は、ワグネルは、ロシア軍側の死者数(公式発表数)を少なく抑えるための「捨て駒」として使われている可能性が高いと指摘した。ワグネルをウクライナに派遣することで、人権侵害行為から距離を置くこともできる。

国際行動規範協会のジェイミー・ウィリアムソン事務局長は、ワグネルはロシア軍の元兵士たちを雇い、「軍事請負組織」の機能を果たしていると指摘した。

「冷戦初期のような傭兵集団」

「ワグネルとロシア政府との間には、支配権と資金の出処という点において、明らかなつながりがある」とウィリアムソンは本誌に語った。「ロシア政府はその存在を認めていないが、ワグネルは軍事請負集団と見なされている。冷戦初期にみられたような傭兵集団に等しい存在であり、アフリカの南部、東部や西部の複数の企業がワグネルに関与しているとみられる」

本誌は、傭兵使用に関する国連作業部会のソーチャ・マクラウド議長、および国際的な人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチに、ワグネルについてのコメントを求めたが、本記事の発行時点までに返答はなかった。

ウクライナにおけるロシアの軍事作戦は、ウクライナ側の激しい抵抗を受け、停滞している。これまでにウクライナの民間人を含む数千人がこの戦闘で命を落とし、数百万人が避難を余儀なくされている。

20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米プリンストン大への政府助成金停止、反ユダヤ主義調

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中