「夫は頭を撃たれ、切られ、拷問された」 キーウ近郊ブチャでの惨劇
ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊・ブチャの道ばたには、後ろ手に縛られ、頭部に銃弾を受けた男性が倒れていた。ウクライナ当局の発表によると、ロシア軍による5週間の占領後に見つかった地元住民の遺体は数百人に上る。写真は破壊されたロシアの戦車と装甲車を、携帯電話で撮影するウクライナ兵。ブチャで4月2日撮影(2022年 ロイター/Zohra Bensemra)
ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊・ブチャの道ばたには、後ろ手に縛られ、頭部に銃弾を受けた男性が倒れていた。ウクライナ当局の発表によると、ロシア軍による5週間の占領後に見つかった地元住民の遺体は数百人に上る。
ブチャのタラス・シャプラフスキー副市長は、ロシア軍の撤退後、ロシア軍による法を逸脱した殺害の犠牲となった約50人の遺体が発見されたと述べた。ウクライナ当局は戦争犯罪だと、ロシア政府を糾弾している。
ロイターは、死亡した住民を誰が殺害したのか、独自に確認することはできなかった。
しかし、ロイターの記者が3日に確認した3人の遺体は、いずれも頭部に銃弾を受けており、処刑されたとするアナトリー・フェドルク市長らの証言と状況が一致した。3人のうち1人は両手を縛られ、2人は縛られていなかった。
3人は、体の他の部位に目立った傷はなかった。全員男性で民間人の服装だった。手を縛られた遺体には、唇など顔に火薬による火傷の跡があり、至近距離から撃たれたと見られる。
両手は白い腕章のようなもので縛られていた。ある女性によると、ロシア軍はブチャを占領中、住民に身元確認のため腕章の着用を義務付けていた。
ロイターはロシアの政府と国防省に、記者が目撃した遺体について質問したが、回答は得られなかった。
ロシア国防省は3日の声明で、ブチャでロシア軍が「犯罪」を犯したと主張する、ウクライナ当局が公開した写真やビデオは全て「挑発」であり、ロシア軍は住民に暴力を振るっていないと説明した。
また、同省の声明では、3月30日に軍が撤退する際に、キーウ近郊の住民に452トンの人道支援物資を提供したと説明している。
一方、同副市長は、ロシア軍の撤退後、約300人が遺体で発見され、このうち50人がロシア軍に処刑されていたと述べた。ロイターは、この数字を独自に確認することはできなかった。
他の人々は複数の方向から銃弾を浴びるか、もしくは今のところ死因が分かっていない。
市長は「どんな戦争にも民間人に対する交戦規定がある。ロシア軍が、意図的に民間人を殺害したことが明らかになった」と述べた。
浅い墓、供えられたウオッカ
ロイターは、ロシア軍に身柄を拘束された後、遺体で発見された人がいると証言する住民や、頭に1発の銃弾を受けた2人の遺体が発見されたと話す別の住民からも話を聞いた。
ロイターは、こうした住民の証言の内容を独自に確認することができなかった。
タチアナ・ボロディミリブナさんは、夫の墓を指し示し、泣きながら、ロシア軍から受けた辛い体験を語った。墓はできたばかりで浅く、一杯のウオッカとクラッカーが供えられていた。
元ウクライナ海兵隊員である夫とタチアナさんは、自分たちが住む建物にロシア軍が司令部を設置した際、住居から引きずり出され、身柄を拘束された。