最新記事

米軍事

ウクライナ兵器支援、米国内の在庫払底に危機感 ジャベリンはすでに3分の1失う

2022年4月27日(水)13時00分
青葉やまと

対戦車ミサイルのジャベリンのアメリカでの在庫が懸念されている...... Military News-Youtube

<大量の兵器パッケージを送付しウクライナ戦線を支えるアメリカだが、本国の在庫も無尽蔵ではない。続ければ自国の有事対応に支障が出るとして、軍事計画者たちは神経を尖らせはじめた>

ウクライナ支援で追加の兵器パッケージの送付を決めたアメリカだが、国内在庫の枯渇が問題視されるようになった。対戦車ミサイルのジャベリンはすでに7000発を提供しており、これによりすでに全米の在庫数の3分の1を失うなど、大量の兵器輸出が続いている。

米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS、以下「戦略研」)は4月中旬のツイートで、「アメリカはウクライナに対し数千というジャベリンを提供してきたが、アメリカの在庫は減少傾向にある」と述べ、在庫状況への危機感を示した。

ジャベリンは、携行型の対戦車砲だ。歩兵が持ち運んで移動することができ、最大2500〜4000メートル離れた地点から戦車を撃破できる。ウクライナ防衛で高い成果を挙げており、「戦場の守護天使」「ロシア軍侵攻阻止の象徴」などと呼ばれるようになった。

在庫の3分の1が消えた

在庫問題の詳細について、戦略研で国際保障プログラムの上級顧問を務めるマーク・キャンシアン氏が解説している。

米陸軍の予算レポートによると、ジャベリンの生産が始まった1994年以来、累計3万7739発が生産されている。ただし米軍は毎年、演習により在庫の一部を消費している。その推定数を差し引くと、ウクライナ提供前時点での在庫は2万から2万5000発ほどだと氏は見積もる。すでに提供された7000発により、在庫の3分の1前後が消えた計算だ。

氏は「アメリカはまず間違いなく、在庫のおよそ3分の1をウクライナにすでに提供している。したがってアメリカは、自国の戦争計画に十分なだけの大量の備蓄を確保するために、輸出量を削減せざるを得ない時期に近づいている」と指摘した。

神経尖らせる米軍事プランナーたち

レポートを受け、豪ニュースサイトの『news.com.au』は、「アメリカでウクライナ向けの武器が枯渇する可能性がある」「ウクライナのロシアに対する戦争に関し、大きな問題が生じている」と報じた。


インド右派メディアの『リパブリック・ワールド』は、「在庫の約3分の1をウクライナに送った米政府は、この『象徴的な武器』を使い果たす瀬戸際にある。したがって直ちに提供を縮小し、自国のために十分な備蓄を確保するよう求めている」と述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中