最新記事

大学

名門UCバークレーに「壊滅的」な裁判所命令 入学者3000人削減へ

2022年3月17日(木)16時42分
青葉やまと

UCバークレーの入学生が3000人以上減ることに......。 REUTERS/Noah Berger

<入学枠の3分の1削減を迫られ、大学側は66億円の損失を予想。志望する若者にとっても、狭き門は一段と厳しいものとなった>

米西海岸の名門・カリフォルニア大学バークレー校(以下「UCバークレー」)に危機が訪れている。合格発表間近に、今年秋の入学生を予定数から3000名以上削減せよとの裁判所命令が下った。

アラメダ郡高等裁判所はUCバークレーに対し、在籍学生数を最大でも4万2357人に留めるよう命じた。これにより同校の本年の入学者枠は3050名となり、本来であれば入学できていた学生のうち3人に1人が入学できなくなる。

合格者数への影響はさらに大きく、本来合格通知を受けとることができたはずの5100名の志願者が不合格となる。一般に大学は入学辞退者を見込み、実際の受け入れ可能枠1名分に対して1名以上の合格者を発表するためだ。

この時期の削減命令に、関係者は動揺を隠せない。ロサンゼルス・タイムズ紙によると同校は、「判決が変更されなければ、今後入学する学生、大学経営、キャンパス運営、そしてカリフォルニアの学生を育む大学の能力の観点で、壊滅的な影響を生じる可能性がある」と述べている。大学経営への影響は避けられず、授業料収入だけで5700万ドル(約66億円)の損失が降りかかる試算だ。

入学者が増えるとホームレスが増える?

UCバークレーは米各紙が発表する大学ランキングの上位常連であり、自由な気風と文武両道の方針で知られる。これまでに100名を超えるノーベル賞受賞者を輩出し、多数の著名アスリートを世に送り出してきた。スタンフォード大学のライバル校としても名高い。

しかし、裁判所による削減命令の裏には、地域との複雑な関係が見え隠れする。州外やアメリカ国外から数万人の学生を呼び込んでいることで、地域の生活環境の悪化が深刻な問題となってきた。大学の絶え間ない拡張を快く思わない住民は少なくない。

増え続ける学生数は、20年近く前から地域の課題となってきた。2005年の段階でUCバークレーは、2020年の入学者が3万3000人あまりになると発表していた。だが、2016年の時点ですでに予想を30%超過している。大学が市の住宅不足に拍車をかけ、低所得者層が家を失いホームレスになっているほか、多数の学生による騒音やゴミ問題への苦情が発生している。

賃料高騰のベイエリア 狭い寮に11万円も

ロサンゼルス・タイムズ紙の報道によると今回の裁判は、地元NPO「バークレー近隣を救う会」が原告となっている。救う会の代表は「学生人口の急増による影響を大学側が満足に分析しておらず、学生を収容するに足る住宅を建設しなかった」と非難している。引き続き地元の学生を入学させることに問題はないが、州外からの入学生と留学生の受け入れを拒否すべきだとNPOは主張している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米ロなど大規模身柄交換、WSJ記者ら26人 バイデ

ビジネス

米建設支出、6月は予想外の0.3%減 一戸建て住宅

ビジネス

米モデルナ、24年売上高見通し下方修正 EU向けの

ワールド

ヒズボラ指導者、報復示唆 イスラエル空爆による司令
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvs.ハリス
特集:トランプvs.ハリス
2024年8月 6日号(7/30発売)

バイデンが後継指名した副大統領のカマラ・ハリス。トランプとの決戦へ向け、世論の支持を集めつつあるが

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    化学燃料タンクローリーに食用油を入れられても、抗議しない中国人の心理
  • 2
    「残飯漁ってる」実家を出たマドンナ息子が訴える「窮状」に批判殺到...無言貫くマドンナは「ノーパンツ」で登場
  • 3
    イーロン・マスク絶賛の韓国射撃エース、キム・イェジ 銀メダルは娘のぬいぐるみのおかげ?
  • 4
    中国が鳴り物入りで開いた3中全会は、壮大な「ゴミ時…
  • 5
    ワグネル戦闘員がマリでの待ち伏せ攻撃で数十人死亡─…
  • 6
    ロシア兵が「ナチス式敬礼」をした?という話題より…
  • 7
    ウクライナ戦争で「環境政策」の時計は30年も逆戻り.…
  • 8
    ニュースのせいで鬱になる...「ドゥームスクローリン…
  • 9
    NATOの東部前線を「鉄壁化」せよ──独基地からポーラ…
  • 10
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド…
  • 1
    「谷間」がまる見え、だが最も注目されたのは「肩」...ジェンナー姉妹の投稿に専門家が警鐘を鳴らすワケ
  • 2
    パリ五輪のこの開会式を、なぜ東京は実現できなかったのか?
  • 3
    人道支援団体を根拠なく攻撃してなぜか儲かる「誹謗中傷ビジネス」
  • 4
    免疫低下や癌リスクも...化学物質PFAS、手洗いなどで…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    「50代半ばから本番」...女性が健康的に年齢を重ねる…
  • 7
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム…
  • 8
    養老孟司が「景気のいい企業への就職」より「自分の…
  • 9
    ロシア兵が「ナチス式敬礼」をした?という話題より…
  • 10
    ロシアの防空システム「Tor」をHIMARSが爆砕する劇的…
  • 1
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 2
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 3
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 6
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 7
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 8
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
  • 9
    携帯契約での「読み取り義務化」は、マイナンバーカ…
  • 10
    ルイ王子の「お行儀の悪さ」の原因は「砂糖」だった.…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中