米ロが冷戦後最大の身柄交換、WSJ記者ら バイデン氏「外交の偉業」
ロシアでスパイ罪に問われ懲役16年の判決が出された米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のエバン・ゲルシコビッチ記者(写真)らが、捕虜交換で釈放され、1日中にも米国に帰国する可能性がある。7月撮影(2024年 ロイター/Dmitry Chasovitin)
Andrew Osborn Filipp Lebedev Lucy Papachristou Trevor Hunnicutt
[モスクワ/アンカラ/ワシントン 1日 ロイター] - 米国とロシアなどは1日、囚人の大規模な身柄交換を実施した。ロシアで収監されていた米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のエバン・ゲルシコビッチ記者や元米海兵隊員ポール・ウィラン氏ら24人が解放され、冷戦後最大の身柄交換となった。
米ホワイトハウスはロシアやドイツなどと1年以上にわたり複雑な交渉を進めていたとした。西側諸国で拘束されていた8人がロシアに、ロシアから西側に16人が引き渡された。
バイデン大統領は今回の身柄交換を「外交と友好の偉業」とし、同盟国による「大胆で勇敢な決断」を称賛。「同盟国なしには不可能だった」とし、「なぜ世界に友好国が不可欠なのかを示す強力な例となる」と述べた。
ドイツは殺人罪で有罪判決を受け同国で服役していたロシア人ワジム・クラシコフ受刑者の釈放を発表。容易な決定ではなく、「ドイツ国民を守る義務と米国との連帯が重要な動機になった」と説明した。
交換にはこのほかポーランド、スロベニア、ノルウェー、ベラルーシの受刑者が含まれ、トルコが仲介役を担った。
サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、今回の大規模な囚人交換で金銭のやり取りはなかったと述べた。また、合意にこぎ着けるために制裁措置を緩和することもなかったとした。
トランプ氏は詳細を把握していないとした上で「殺人者や凶悪犯」が解放されたのかと問い、「米国は特に拘束者交換で決して良い取引をしない」などと投稿した。
クレムリン(ロシア大統領府)は、プーチン大統領が西側諸国との身柄交換の対象となった米国人3人を含む12人を大統領令で恩赦したと発表。外国で拘束されているロシア人の返還を目的とした措置と説明した。プーチン氏はモスクワの空港で帰国者を迎え、称号を付与すると述べた。
身柄交換には米政府系「ラジオ自由欧州・ラジオ自由(RFE・RL)」の女性記者アルス・クルマシェワ氏、プーチン政権を批判した反政権活動家ウラジーミル・カラムルザ氏のほか、ロシアの野党政治家イリヤ・ヤシン氏、ロシアの人権団体「メモリアル」幹部だったオレグ・オルロフ氏らが含まれた。
ロシアの同盟国ベラルーシで先月死刑判決を受けたドイツ国籍のリコ・クリーガー氏も交換対象となった。ベラルーシは今週、クリーガー氏に恩赦を与えていた。
サリバン氏は、獄死したロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏も対象になるはずだったと述べた。
WSJのエマ・タッカー編集長はXに投稿した書簡で、ゲルシコビッチ記者が解放された「喜ばしい日」とし、「帰国に向け粘り強く決意を持って取り組んだバイデン大統領と政権に感謝する」と述べた。