最新記事

大学

名門UCバークレーに「壊滅的」な裁判所命令 入学者3000人削減へ

2022年3月17日(木)16時42分
青葉やまと

現地の住宅事情は切実だ。サンフランシスコ・ベイエリアには、テック大手GAFAを構成する4社のうち3社が集結する。業界の好況と富裕層の流入に伴い、家賃は高騰してきた。ありきたりなワンルームマンションの賃料が30万円を超えることもめずらしくない。家を借りられず、テント暮らしや車中泊などでしのぐ人々が社会問題となってきた。

バークレーもサンフランシスコ中心部から湾を挟んですぐ対岸に位置しており、この影響を如実に受けている地域のひとつだ。UCバークレーの学生に関しても、住環境は良好とはいえない。一部の学生は戸建てを改造した寮に数人で住み、1人あたり月に1000ドル(約11万5000円)の寮費を負担している。

増加の一途をたどる同校の学生に対し、救う会は一貫して不快感を示している。下級審は昨年8月、法廷闘争が決着するまでの暫定措置として、同校の学生数を2020年度と同水準に維持するよう命じた。今回の判決はこの判断を支持する内容となる。

志願者に広がる不安

住民感情の一方、判決は同校を目指していた志願者たちに動揺を与えている。UCバークレーの志願者は、今年度だけで15万人に及ぶ。そのなかには、この地域で生まれ育ち、日々目にするキャンパスへの入学を夢見てきた若者も含まれる。学生数を削減するとなれば、こうした地域の若者への影響は避けられない。

17歳のマックス・シュロスバーグ青年も、削減命令に胸を痛める受験者の一人だ。バークレーの街で育ち、両親が学生時代を過ごした大学に自分も通う日を思い描いてきた。だが、ただでさえ難関のUCバークレーの門をくぐれる可能性は、判決により一段と低くなった。サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙に対しシュロスバーグ青年は、「すでに僕にはどうしようもありません」とこぼす。

UCバークレーは地域のシンボルでもあり、住宅問題を除けば住民との関係は必ずしも敵対的というわけではない。大学前のテレグラフ・アベニューは、芸術や文化、リベラルな活動の拠点として、1960年代から常に話題を提供してきた。今日でも観光客を惹きつけるメインストリートとなっており、その歴史は大学の発展と共にある。

大学側は州の最高裁判所に削減命令の停止を求めており、市議会は決議でこれを支持した。合格発表まで1ヶ月を切るなか、志願者たちは固唾を呑んで事態の行く末を見守っている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中