最新記事

中国

人民日報がウクライナ危機に乗じた反米キャンペーンを開始

At Home, 'Neutral' China Pushes Vladimir Putin's Agenda on Ukraine War

2022年3月30日(水)17時16分
ジョン・フェン

ロシア支援と見せかけて対米戦争を仕掛ける習近平(右)(2022年2月、北京) Sputnik/Aleksey Druzhinin/Kremlin/REUTERS

<ロシアによるウクライナ侵攻に対し「中立」と称してきた中国が、国内向けにロシアの責任をアメリカやNATOに押し付ける主張を展開し始めた>

中国政府はロシアが仕掛けた戦争の責任を西側に押し付ける新たなキャンペーンに乗り出した。中国共産党の機関紙が、アメリカはウクライナの危機について「逃れられない責任」を負っていると宣言したのだ。

「ウクライナ危機の背後には、アメリカの覇権の影がある」と、共産党の公式見解を伝える人民日報は3月29日付の3面の論説で述べた。執筆者の「鐘声」(中国指導部が国際情勢を解説する際のペンネーム)は、さらにこう続ける。「アメリカ主導のNATOの東方拡大がウクライナ危機の根本原因であり、アメリカはウクライナ危機を扇動している」

この論説は中国共産党のプロパガンダ担当部門が繰り出す新シリーズの第一弾で、アメリカ主導の戦後国際秩序に対する中国政府の数年に及ぶ闘争の最前線となる。

表向きはNATOという「冷戦の遺物」を批判する内容だが、それ以上に、米中対立のシナリオ作りをする中国政府が、国民に西側諸国全般、特にアメリカについてどのように認識してほしいかを示している。

この論説は最後に、欧州に新たな安全保障のメカニズムを構築するにあたり、すべての当事者は東西の枠に捉われず、地政学を「現実的かつ冷静に」見つめるよう呼びかけた。

そして「ウクライナ危機を扇動し、その推進に最も大きな役割を果たしたアメリカは、その軽蔑に値する役割を反省し、冷戦的な考え方と覇権主義的な行動を完全に放棄し、世界と地域の平和と安定に真に貢献すべきである」とも述べている。

中立を主張しつつ支援

2月24日にプーチン大統領がウクライナへの侵攻を命じて以来、中国はこの紛争の「当事者ではない」という立場を堅持してきた。3月2日と24日の国連総会では、それぞれ141カ国と140カ国がロシアの戦争を非難し、ウクライナで拡大する人道的危機の原因としてロシア政府を非難したにもかかわらず、中国は表向き中立を宣言し、自国の立場は国連での多数派と一致している、と主張してきた。

だが中国が国連で賛成票を投じたのは、ロシアが独自に作成したウクライナに関する人道的決議案だけだ。ロシアによる軍事侵攻についてまったく触れていないこの決議案は、23日の国連安全保障理事会で否決された。

中国は、ロシアとは通常の貿易関係を継続するが、武器やその他の戦時物資を提供してプーチンを直接的軍事的に支援することはないと主張している。

もしロシアにそのような支援をすれば、中国も制裁を受けることになると米政府は警告shしている。最近では、オンライン首脳会議でジョー・バイデン大統領も習近平国家主席に、直接くぎを刺した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、英仏と部隊派遣協議 「1カ月以内に

ワールド

トランプ氏の相互関税、一部発動 全輸入品に一律10

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、2週連続減少=ベーカー

ワールド

台湾の安全保障トップが訪米、トランプ政権と会談のた
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中