最新記事

中国

人民日報がウクライナ危機に乗じた反米キャンペーンを開始

At Home, 'Neutral' China Pushes Vladimir Putin's Agenda on Ukraine War

2022年3月30日(水)17時16分
ジョン・フェン

それでも、アメリカをはじめ主要国がプーチンを世界の舞台から孤立させようとする中で、中国はロシアを外交的・政治的に援護していると西側諸国は見ている。その証拠に、中国はロシアを非難しない。しかも、国内向けには反米反西欧の強いメッセージを発している事実もある。

ロシアのNATOに対する不満を繰り返し説明た29日付の人民日報の論説は、まさに習とプーチンの絆をさらに象徴するものだった。こうした中露首脳の接近を、米政府は不安視している。

この論説は、21世紀の国際関係に対する中国の見方をも如実に表している。中国政府指導者の目から見ると、力の劣る国々は常にアメリカの指導者の言いなりだ。ウクライナのような中小国、ひいては冷戦後にNATO加盟を選んだ国々には、自国の外交・安全保障政策を決定する能力はほとんどない、というのだ。

人民日報の社説は、バイデンが好んで使う「民主主義対独裁主義」「善対悪」という概念にも矛先を向け、「ブロック対立」や「イデオロギー対立の誘発」によって中国の発展を抑制しようとしている、と暗にバイデンを非難した。

中国の対米代理戦争

中国とロシアとの連携は、2月のウクライナ侵攻のずっと前から始まっていたと考える人も多い。なかには両国が団結するのは必然と見る人さえいる。2月4日の中露首脳会談後に発表された5000語にも及ぶ共同声明で、中国はロシアがNATOに対して抱く安全保障上の懸念を正式に支持し、ロシアはアジア全体を包含するインド太平洋地域へのアメリカの関与に対する中国の不満に同調していたからだ。

ウクライナ紛争をめぐる中国の姿勢は、ロシアを全面的に支持するだけでなく、ドナルド・トランプ前大統領の政権下で本格化したアメリカとの対立における中国の姿勢を鮮明に表している。
.
つまり中国のロシア支援はアメリカに対する代理戦争のようなものだと観測筋は見ている。中国が、衰退に向かう末期的な超大国とみなすアメリカに対する戦争だ。

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

企業のAI導入、「雇用鈍化につながる可能性」=FR

ビジネス

ミランFRB理事、0.50%利下げ改めて主張 12

ワールド

米航空各社、減便にらみ対応 政府閉鎖長期化で業界に

ビジネス

米FRBの独立性、世界経済にとって極めて重要=NY
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの前に現れた「強力すぎるライバル」にSNS爆笑
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 6
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 9
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 10
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中