自ら基地局を破壊し暗号化できない、携帯使えなくなり民間人の携帯を奪う......ロシア軍「情報」ダダ漏れ
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侵攻前、ウクライナ国境に集結していたロシア軍兵士は戦闘のために隣国に送られるとの通達をほとんど、あるいは全く受けていなかった。
そのせいで混乱が広がり、情報伝達体制はさらに悪化した。
「侵攻の24時間前に告げられたため、各部隊の配置や連携関係を把握することができず、暗号化通信を可能にする無線の暗号化キーも交換できなかった。従って、無線機を使用するために、オープンシステムでやり取りする結果になった」と、英シンクタンク、王立統合軍事研究所(RUSI)のジャック・ワトリング地上戦担当研究員は言う。
暗号化されていない周波数で送られているロシア軍の通信は、アマチュア無線愛好家も、ウクライナや第三国の情報機関も簡単に傍受できる。
「ロシア側のやりとりを聞けば、彼らがショック状態で、何が起きているのかを理解していなかったことが明らかだ」と、ワトリングは話す。
機能不全の通信体制は、ロシア軍の死者数増加の一因にもなっている。
ウクライナ側の推計では、その数は1万5000人超。アメリカなどによる推計も同水準で、イラクとアフガニスタンでの戦争による米軍の合計死者数を既に上回っている。
ケータイで電話する兵士
「軍隊には古い格言がある。戦場で通信ができないなら、それはただのキャンプだ、と」。元米国防総省副次官補(中東担当)で、元CIA準軍事作戦将校のミック・マルロイはそう言う。
「通信が不可能なら、軍事作戦とは言えない」
情報機関のウクライナ保安庁は、ロシア軍の兵士や上層部、親族らの通話を多数傍受している。
ある兵士は母親への電話で、所属部隊が5階建ての集合住宅を無差別爆撃した、多くの部隊は逃亡したいと思っていると話していた。
ロシア国防省に戦力を誇張して報告した、と認める発言も複数の部隊で確認された。
暗号化システムの失策は、ウクライナ軍によるロシア軍司令官の殺害件数の増加にもつながっていると、あるヨーロッパ人外交官(最新の軍事情報に関する発言であることを理由に匿名を希望)は指摘する。
特筆すべきなのは、ロシア陸軍のビタリー・ゲラシモフ少将の事例だ。
オープンソース型の調査報道サイト、ベリングキャットのユーザーらが明らかにしたように、現地のロシア軍偵察将校は上級司令官であるゲラシモフの死亡情報を、暗号化されていない携帯電話回線を使って本国に送っていた。ロシア軍最高幹部の甥とされるゲラシモフは3月7日、ハリコフ近郊での戦闘中にウクライナ軍に殺害されたという。