「ゴールポスト」動かしだしたロシア 行き詰まるウクライナ侵攻
両軍は定期的に敵側の装備の損失数を発表しているが、自国側の損失は確認していない。
進軍を阻止されたロシアは、ロケット弾や迫撃砲による都市部への攻撃に出ている。
ウクライナ東部での勝利も厳しく
ロンドンのシンクタンク、王立防衛安全保障研究所(RUSI)の地上戦専門家、ニック・レイノルズ氏は「現段階では進撃が止まっているか、せいぜい非常にゆっくりとしか進んでいない」と分析。「当初の戦略は今や完全に達成不可能になった。当初の戦略はウクライナ政府の排除、もしくは侵攻するだけで崩壊の原因を作ることだった。それが実現しなかったのは明白だ。正反対に近いことが起きている」と述べた。
ロシアは東部からウクライナ軍を追い出すという、縮小後の目標を達成するのにさえまだ努力が必要だ。ドンバス地域を構成する2州のうち、ルガンスク州はロシアの支援を受けた軍が93%制圧したが、ドネツク州は54%の制圧にとどまっているとウクライナ国防省は説明している。
一方、ウクライナは日増しに自信を深めているようだ。Oleksandr Gruzevich陸軍幕僚副長は25日、ロシア軍がキエフを制圧するには現状の3倍から5倍の部隊が必要だと指摘。ロシア軍は併合したクリミア半島とドンバスを南岸沿いに結ぶ「陸の回廊」を確立しようと試みているが、阻止されていると述べた。
米軍元司令官のホッジス氏は、ロシアが化学兵器や核兵器に手を出すのではないか、との恐怖に西側が打ち勝ち、ウクライナへの支援をさらに強化できるかが今後の焦点だと強調する。ホッジス氏によると、化学・核兵器の使用はロシアにとって何ら戦術的メリットがない。
同氏は、長距離ロケット弾、迫撃砲、ドローンといった兵器の供与拡大と併せ、諜報面でも西側が支援することにより、ウクライナは防戦から攻勢に転じることが可能だと指摘。「われわれはウクライナに大量の支援を行っておらず、小出しにしかしていない。負けてほしくはないが、積極的に勝たせようともしていない、といった感じがする」と語った。
(Mark Trevelyan記者)
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