「ゴールポスト」動かしだしたロシア 行き詰まるウクライナ侵攻
ロシアはプーチン大統領がウクライナに勝利を宣言して面目を保てるよう、「ゴールポスト」を動かした──軍事の専門家の間でそうした見方が出ている。ウクライナのマリウポリで24日撮影(2022年 ロイター/Alexander Ermochenko)
ロシアはプーチン大統領がウクライナに勝利を宣言して面目を保てるよう、「ゴールポスト」を動かした──軍事の専門家の間でそうした見方が出ている。
ロシアは2月24日、陸、海、空からウクライナに攻撃を仕掛け、首都キエフまで迫った。ウクライナと西側諸国は侵攻の狙いについて、ゼレンスキー大統領率いる民主政権を転覆させることだと指摘していた。
しかし、ロシア軍高官は今月25日、真の目的はウクライナ東部ドンバス地域の「解放」だと述べた。この地域では過去8年間、ロシアの支援を受けた親ロシア派武装勢力がウクライナ軍と戦闘を重ねている。
ロシアのセルゲイ・ルドスコイ第1参謀次長は「作戦の第一段階の主目的はおおむね遂行された」と発言。「ウクライナ軍の戦闘能力は大幅に減退した。これにより、われわれは主な目標であるドンバスの解放を達成するための努力に注力できるようになった」とした。
プーチン氏は、ウクライナがドンバスでロシア系住民の「ジェノサイド(集団殺害)」を行っていると、証拠を示さずに主張してきた。ロシアが長年繰り返してきたウクライナ批判の中で、この地は特別な存在となっている。
しかし、ドンバス全体の掌握が当初の目的であったとすれば、ロシアははるかに限定的な攻撃を仕掛け、北、東、南からウクライナに侵攻することによる労力や損失を免れることができたはずだ。
欧州でかつて米軍司令官を務め、現在は欧州政策分析センター(CEPA)に所属するベン・ホッジス氏は「彼らが計画していたことすべてに完全に失敗したのは明白だ。だから今、勝利を宣言できるように目標を定義し直している」と指摘。
「彼らは明らかに大規模な攻撃作戦を続ける能力がない。兵たんに問題があるのは誰の目にも明らかであり、人的資源にも深刻な問題を抱え、予想だにしなかったほどの強い抵抗に遭っている」と述べた。
防戦から攻勢へ
ロシアが言う「特別軍事作戦」による代償は大きい。ルドスコイ第1参謀次長は25日、これまでのロシア兵の戦死者は1351人だと述べた。ウクライナ側は、実際の人数はその10倍だと主張している。
検証可能な写真や動画を元に両軍の装備の損失を記録しているオランダの軍事ブログ「Oryx」によると、ロシアはこれまでに戦車295台、航空機16機、ヘリコプター35機、船舶3隻、燃料輸送列車2本を含む1864の装備を失った。ウクライナ側については戦車77台を含む540の装備の損失を確認している。