ドイツのリゾート地、ロシアのオリガルヒめぐり対立 制裁かプライバシーか

ドイツのリゾート地の政治家が今月、この地に住居を構えるロシアのオリガルヒ(新興財閥)への抗議活動を始めると、賛同者が集まる一方で、怒りの電子メールや脅迫めいた電話も来るようになった。写真はドイツ南部テガーンゼー湖に浮かぶボート。2020年7月撮影(2022年 ロイター/Michael Dalder)
ドイツのリゾート地の政治家が今月、この地に住居を構えるロシアのオリガルヒ(新興財閥)への抗議活動を始めると、賛同者が集まる一方で、怒りの電子メールや脅迫めいた電話も来るようになった。
「富裕層の聖域」となることに対するドイツ国民の二律背反的な心理を、この反応は映し出す。ドイツの文化は個人のプライバシーを尊重する一方、そのことが超富裕層の資産隠しを許してきたとの批判もある。
ロシアによるウクライナ侵攻を受け、英国、フランス、イタリア、スペインなどの欧州諸国はロシアの有力者が所有するヨットなどの資産を押収したが、ドイツは手をこまねいているように見える。
国会議員のリサ・パウス氏は「ドイツは長年、世界中から汚れたカネを引き寄せてきた。あまりにも長い間、われわれは十分な精査を怠り、そのツケに今苦しんでいる」と話す。
政府は、省庁横断的に制裁を実施するための作業チームを立ち上げようとしている。
バイエルン州の湖畔、テガーンゼー周辺のリゾート地は最近、ドイツとオリガルヒとの不穏な関係ゆえに注目を浴び、居心地の悪い思いをしている。地元民や高官らによると、ここにはウズベキスタン生まれのロシアの実業家、アリシェル・ウスマノフ氏が所有する住居が少なくとも3軒ある。
ウスマノフ氏は鉱業や通信などの事業に携わり、資産総額は英国の推計で180億ドル(約2兆1600億円)を超える。欧州連合(EU)は同氏に制裁を科す際、「親クレムリンのオリガルヒで、プーチン・ロシア大統領と特に緊密な関係にある」と説明した。
ウスマノフ氏の持ち株会社USMのウェブサイトには、同氏は企業家、投資家、そして「世界有数の寛大な慈善家」だと記されている。USMはコメントを控えた。同氏が保有する他の2社にもコメントを要請したが、返答はなかった。
テガーンゼーの南端、ロッタッハ・エーゲルンのトーマス・トマシェク町議会議員は今月、ウスマノフ氏を受け入れるのをやめよう、と呼びかける抗議活動を開始した。人口5000人のこの町ではレストランから大工、ホテル経営者までがウスマノフ氏の存在によって潤っている。
活動には党派を超えて300人の賛同者が集まったが、反発も湧き起こった。