コロナとロックダウン「再襲来」に、爆発寸前の中国の「不満」が政府に向かう
China's Virus Crisis
北京の大規模検査センターで順番を待つ市民(3月15日) KEVIN FRAYER/GETTY IMAGES
<オミクロン株の急拡大で、再びロックダウンを行う都市が増加。対策のほころびへの不満が政府を揺さぶる可能性も>
中国が2020年の第1波以来、最悪の新型コロナ感染拡大に直面している。今回の流行は猛スピードで拡大するオミクロン株が主流で、多くは無症状のため、感染経路の追跡は困難だ。本格的なエピデミック(局所的流行)にはならないとしても、既に社会に影響が出ている。
香港に隣接する南東部の経済中心地、深圳はロックダウン(都市封鎖)に踏み切った。上海では学校や企業が臨時休業になり、北京や天津でも数多くの施設が閉鎖されている。
中国では既に計5000万人以上がロックダウン下にある。今後数週間、膨れ上がる新規感染者数と共に、封鎖を行う都市は増え続けそうだ。
新たな感染拡大に、一般市民は驚きと不満を示している。大きな不安が渦巻くなか、連帯感が芽生えた第1波当時とは対照的なムードだ。
厳格な新型コロナ対策に加えて、経済減速や検閲強化にさらされる中国社会の善意はすり減っている。ロックダウン中の市民からは、調整不足や突然の隔離命令に対する苦情の声も上がる。
感染力の強いオミクロンであっても、20年に武漢で成功したように、新たな大流行を抑え込むことはまだ可能だ。中国のロックダウンは徹底的で、大規模検査も積極的に実施している。
ぞっとするような「隔離」体制
だが今回は乗り切っても、負担の大きい「感染拡大再発とロックダウンのサイクル」に再びはまる恐れは消えない。科学者らは出口戦略の策定をほのめかしているが、中国がゼロコロナ政策と手を切る道は今のところ見えない。
中国の中央集権型の隔離体制は、新型コロナ対策の要点とはいえ、ぞっとするようなものでもある。アメリカ出身の実業家、カール・セッツァーは20年後半に検査で陽性結果が出た後、隔離用の病院などに50日以上、強制的に収容された体験を発表している。
さらに、複数のSNS上での私的な発信から判断すると、隔離現場では汚職がはびこっているようだ。コネのある宿泊施設や配達会社、ケータリング企業が事実上の独占状態を謳歌している。
香港の現状は、中国にとって悪夢のシナリオと言える。