コロナとロックダウン「再襲来」に、爆発寸前の中国の「不満」が政府に向かう
China's Virus Crisis
香港では昨年末まで市中感染はほぼゼロが続いていたが、2月に入ってオミクロンが急拡大。3月上旬には、人口100万人当たりの1日の死者数が世界最高を記録した。
一因は香港の過密状態にあるが、高齢層のワクチン接種率が低いのも理由だ。介護施設入居者のうち、接種完了者の割合は15%にすぎない。香港と似た経緯をたどったニュージーランドでは、ワクチン接種の普及のおかげで、パンデミック発生以来の死者数は144人にとどまっている。
欧米ワクチンを批判してきたツケ
中国には、アメリカのような政治色の強い反ワクチン運動は存在しない。国全体の接種完了率は約87%に達しているが、高齢層に限ると割合はずっと低く、80歳以上の人ではわずか50%ほどだ。
中国の高齢層は遠隔地在住者が多く、ワクチンの副作用を懸念しがちで、移動や通勤のために接種証明書が必要になることは少ない。この2年間近く、新型コロナが封じ込められていたこともあって、今までは危機感が薄かった。
さらに、香港ではファイザー製のmRNAワクチンが普及しているが、大陸部で接種できるのはより有効性が低い中国製ワクチンだけだ。mRNAワクチンの入手資金はあるものの、この1年間に欧米製のワクチンに関する偽情報をばらまいてきたため、今さら供給するのは政治的に都合が悪い。国内産mRNAワクチンを開発する動きもあるが、実現はまだ先だ。
今回の感染拡大を抑制できなければ、指導層にとって最悪の事態になりかねない。
香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は既に、中国政府寄りの保守派からも不名誉な引責辞任を求められている。大陸部ではより情報統制が厳しいとはいえ、異例の3期目続投を見据える習近平(シー・チンピン)国家主席にとって、今年は困難な年になりそうだ。
各都市の封鎖措置は、サプライチェーンに深刻な打撃を与える可能性が高い。上海は世界最大級の国際貿易港を擁し、深圳は輸出品の主要な製造拠点だ。工場側はある程度までロックダウンに備えており、それほど支障なく稼働を継続できるかもしれない。それでも、制限の規模を考えると、輸送体制が大きな問題になりそうだ。
中国はこの試練を乗り切れるだろうか。
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