最新記事

衛星画像

各種の衛星画像が、ウクライナの惨状を明らかにしていく

2022年3月22日(火)18時30分
松岡由希子

光学センサの中分解能撮像分光放射計(MODIS)の観測データをもとに火災をモニタリングする「FIRMS」でマリウポリで多くの火災を確認されている image:FIRMS

<被害が進むウクライナの現状を各種の衛星画像が明らかにしている......>

米宇宙技術企業マクサー・テクノロジーズは、ロシアの軍事侵攻以降、ウクライナの上空から商用地球観測衛星「ワールドビュー3」が撮影した衛星画像を公開している。

アゾフ海に面したウクライナ東部の港湾都市マリウポリは、ロシア軍に包囲され、激しい無差別攻撃を受け続けている。マクサー・テクノロジーズがツイッターに投稿した衛星画像によると、2022年3月9日午前10時16分(現地時間)、マウリポリ市内の住宅やビル、食品スーパー、ショッピングモールが破壊された。攻撃前と攻撃後の衛星画像の比較によって被害の状況が明らかにされている。



3月16日には、市中心部の劇場「ドネツク・アカデミック・リージョナル・ドラマシアター」が爆撃を受けた。当時、この劇場には多数の住民が身を寄せており、3月12日頃にロシア語で「子ども」の文字がその前後の地面に書き加えられたという。3月19日に撮影された衛星画像では、この劇場とその周囲で大きな被害がみられる。



光学センサで火災をモニタリング

アメリカ航空宇宙局(NASA)の地球観測衛星「テラ」と「アクア」に搭載された光学センサの中分解能撮像分光放射計(MODIS)の観測データをもとに火災をモニタリングする「FIRMS」では、マリウポリで多くの火災が確認されている。3月19日までの20日間を遡ると、市中心部を中心に多くの火災が発生していることがわかる。

マクサー・テクノロジーズの衛星画像は、首都キエフ近郊でもロシア軍の侵攻をとらえている。
2月28日、キエフ州北西部イバンキフ付近でロシア軍の車列が60キロ以上にわたって連なり、首都キエフに向かう様子が撮影された。3月11日にはキエフ郊外のアントノフ国際空港から出火する様子がとらえられている。


ロシア軍の侵攻を上空からとらえているのはマクサー・テクノロジーズのみにとどまらない。200基以上の人工衛星を用いて地球の全表面を観測する米プラネット・ラボは、2月24日にロシア軍から攻撃を受けた北東部ハリキウ州のチュグエフ空軍基地や2月27日に攻撃を受けて炎上したキエフ近郊バシリキーウの石油貯蔵施設などの衛星画像を公開している。


また、米地球観測衛星サービス企業ブラックスカイでは、2月28日12時14分(現地時間)、北東部ハリコフのホームセンター「エピセンターK」が砲撃の被害を受けた様子をとらえている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中