世界初のブタ心臓移植を受けた男性が死亡
術後数週間、移植された心臓は、拒絶反応の兆候なく順調にはたらいたが...... Inside Edition-YouTube
<世界で初めて遺伝子改変したブタの心臓を移植された患者が死亡した......>
2022年1月に世界で初めて遺伝子改変したブタの心臓を移植された患者が3月8日に死亡した。
米メリーランド在住の57歳男性デイビッド・ベネットさんは2021年10月、命にかかわる不整脈でメリーランド大学医療センター(UMMC)に入院し、ECMO(体外式膜型人工肺)を装着した状態で寝たきりとなった。
彼は従来の心臓移植に不適格と判断され、不整脈により人工心臓ポンプも使えず、ブタの心臓移植が唯一の手段であった。そこで、アメリカ食品医薬品局(FDA)からの緊急使用許可を得て、1月7日、移植手術が行われた。
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術後数週間、移植された心臓は、拒絶反応の兆候なく順調にはたらいた。ベネットさんは家族との時間を過ごし、体力を回復させる理学療法も受けていた。2月にはNFLの優勝決定戦「スーパーボウル」を理学療法士と一緒に観戦し、「愛犬のラッキーのいる自宅へ帰りたい」とよく話していた。
死因はまだ特定されていない......
しかしながら、数日前から容体が悪化。緩和ケアを受けながら最後の数時間には家族とも会話できたという。執刀医のバートリー・グリフィス教授は「最後まで戦った勇敢で気高い患者であることを彼は示した」と哀悼の意を表した。なお、死因はまだ特定されていない。
ヒト以外の動物の体を用いて移植や再生を行う「異種移植」は、長年、研究がすすめられてきた。とりわけ、ブタは、ヒトと臓器の大きさが似ており、成長が早く、多産なため、ドナー候補として注目されている。
今回の心臓移植では、米再生医療企業レヴァイヴィコアが遺伝子改変ブタを提供した。この遺伝子改変ブタは、抗体関連型拒絶反応(AMR)をもたらす3つの遺伝子が取り除かれ、ブタの心臓組織の過剰な成長を防ぐために別の遺伝子1つも取り除かれている。また、免疫受容にかかわるヒトの遺伝子6つが挿入された。
ブタ心臓移植「臓器不足の解消に近づく第一歩となる」
米国では臓器移植待機リストに10万6131人もの患者が登録されている。2021年には4万件以上の移植手術が行われたが、臓器提供を待ちながら年間6000人以上が死亡している。
グリフィス教授は、手術直後、世界初のブタ心臓移植について「臓器不足の解消に近づく第一歩となる」と期待を示していた。
メリーランド大学医学部のモハメド・モヒューディン教授は「異種移植の分野に膨大な知見をもたらす歴史的な役割を果たしたベネット氏に感謝したい」と述べている。