最新記事

ウクライナ情勢

ウクライナに駆けつける外国人義勇兵たち その動機と実態

2022年3月10日(木)11時02分
ウクライナ戦争に参加するクルーガーと名乗る英国からの義勇兵

ウクライナに到着した外国人志願者の一部は、「大義」に惹かれたと話す。写真はクルーガーと名乗る英国からの義勇兵。リビウの駅で5日撮影(2022年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

マイケル・ファーコルさん(29)は、かつて米陸軍の工兵だった。そして、ローマで考古学を学んでいた時にウクライナ大統領による外国人部隊への志願の呼びかけを耳にした。

ファーコルさんはその数日後には、ウクライナ西部の都市リビウに設けられた新兵採用オフィスに出向き、前線でパラメディック(救急救助隊員)として働く希望を伝えていたという。

「負傷者のトリアージを担当したいと伝えた」と、ファーコルさん。戦闘経験は無い。「フィンランドから来た奴もいた。『とにかくロシア人をやっつけたい』と言っていた」

ウクライナは、外国からの志願者による「国際」外国人部隊を設立した。ゼレンスキー大統領は、ウクライナへの支持を示すために、「ウクライナ人と肩を並べてロシアの戦争犯罪者と戦う」ことを世界各国の人々に公式に呼びかけている。大統領は先週、1万6000人以上が志願してきたと述べたが、到着済みの人数については明らかにしなかった。

ウクライナに到着した外国人志願者の一部は、「大義」に惹かれたと話す。数十年に一度しか起きないような民主主義と独裁体制による決戦で、ロシアの侵攻を止めるという大義だ。他方、ウクライナでの戦争は、自国政府から評価されなくなった戦闘スキルを活用する機会を与えてくれる場だと感じて志願した人々もいる。こう考える志願者の多くは、イラクやアフガニスタンでの従軍経験者だ。

ロイターは、外国人志願者やこの取り組みの関係者20人にインタビューを行った。ウクライナが志願者の審査や装備の供与、配備に苦戦しているという指摘も出てきた。

戦闘で鍛えられた従軍経験者と並んで、ほとんど、あるいはまったく戦闘経験のない人々も参加しようとしている。ロシア軍による苛烈な砲撃がたえまなく続く戦闘地域では、こうした人々にできることは限られている。英軍での戦闘経験があると称する男性は、こうした志願者は「弾除けにしかならない」と揶揄する。

リビウで新たに到着する外国人志願者の対応に当たるウクライナ当局幹部のロマン・シェペリャク氏は、外国人戦闘員を受け入れ、訓練して配備するための体制はまだ発足したばかりであり、今後流れがもっとスムーズになるだろうと語った。ウクライナ国防省(修正)はコメントを控えた。

ロシアは2月24日、ウクライナを非軍事化し危険なナショナリストを拘束するための「特別軍事作戦」と称し、ウクライナ侵攻を開始した。ウクライナ正規軍は規模の点でロシア軍に圧倒されているが、かなりの抵抗を見せている。

英陸軍の精鋭であるパラシュート連隊出身というある元兵士によれば、ウクライナで戦うために到着した外国人志願者の中には同連隊の出身者が数十人含まれている。さらに数百人が後に続くだろう、とこの元兵士は話した。ロイターではこの数字の裏付けを取ることができなかった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 10
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中