ニューヨークの地下鉄でアジア系への露骨な口撃が撮影される
アトランタで発生した銃撃事件を受け、ヘイトクライムに抗議するアジア系住民(2021年3月、米デンバー) Alyson McClaran-REUTERS
<新型コロナウイルスの流行以来、激増したアジア人差別。撮影する女性に向かい、男は「全アジア人は死ぬべき」などとヘイトスピーチを続けた>
アジア人に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)が近年急増する中、ニューヨークの地下鉄でアジア系蔑視の暴言を吐く男の動画がインスタグラムに公開された。
今月5日、ニューヨークを拠点に活動する演出家キャット・イェンは、地下鉄タイムズスクエア42丁目駅でアジア人を露骨に差別する男と対峙し、その様子を撮影した。
身元不明の男は、至近距離のイェンに「全アジア人は死ぬべきだ」などと過激な持論を浴びせ、「それを言う権利がある」と主張する。
「なぜ中国人は我々の国にやってくる?」「どうして中国系アメリカ人は『自分の国』で生きられない?」とわめく男に対し、イェンはセントビンセント・ ミッドタウン病院で生まれたことを告げて応戦。この病院は、トラブルの現場となった駅からほんの数ブロックのところに位置する。
「私はレイシスト(人種差別主義者)で、自分の言っていることを誇りに思う。ただし、私はアジア人に対してのみレイシストなのであって、それは彼らが最悪だからだ」
好戦的な男からイェンを守るために他の乗客らが間に入り、別の乗客が男をホームへと引きずり出した。その後、駆け付けた警官によって男は逮捕された。
イェンは撮影の経緯についてインスタグラムに綴っている。投稿によると、男は2人の若いアジア人女性に差別発言を浴びせ、怖がっていた彼女たちが次の駅で降りると、今度は別のアジア人男性を標的に嫌がらせを始めたという。ヘイトスピーチの現場を捉えようと撮影を始めたところ、矛先はイェンに向けられた。
「残念ながら、こうした出来事はニューヨークに住む多くのアジア人が証言できるくらい、最近ごく当たり前に起きている」
投稿の中でイェンはまた、現場にいた警官に「これはヘイトクライムであり、映像もある」と訴えたものの一蹴されたことを強調している。
1月には今回と同じタイムズスクエア42丁目駅のホームで電車を待っていたアジア系女性が、線路に突き落とされて死亡する事件も発生。ニューヨーク市では昨年、アジア人に対するヘイトクライムが131件記録され、28件だった2020年から急増していることが分かる。