最新記事

空域封鎖

「ウクライナに飛行禁止区域設定を要請する」NATO内から初

Estonia Becomes First NATO Member to Call for No-Fly Zone Over Ukraine

2022年3月16日(水)16時54分
ジュリア・カーボナロ

ウクライナ空軍のミグ29は旧ソ連製 Gleb Garanich-REUTERS

<ウクライナが求めてきた空域封鎖は、ロシアとNATOの直接衝突につながりかねないと大国は断り続けてきたが、旧ソ連や旧東欧諸国などロシアに近い国々は恐怖におののいている>

バルト三国の一つ、エストニアは、NATO加盟国として初めて、ウクライナ上空に飛行禁止区域(NFZ)を設定するよう求めた。

ウクライナと同じく旧ソ連の崩壊で独立し、今もロシアと国境を接するエストニアの議会は3月15日、EU諸国と国連加盟国に対して、「ウクライナで多数の民間人が犠牲にならないよう、NFZを設定するための緊急措置を講じる」ことを求める決議を可決した。

ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領はNFZの設定を繰り返し求めているが、ロシアと西側諸国が直接軍事衝突することを懸念する各国政府は、この要求を拒否してきた。

NFZが設定されれば、NATO加盟国の航空機がウクライナ上空をパトロールし、NFZに入ったロシア航空機を撃墜できることになる。これが核保有国同士の直接対決の引き金となり、世界大戦の口火が切られる可能性もある。

30カ国に上るNATO加盟国のほとんどは、このような戦争の拡大を望んでおらず、アメリカのジョー・バイデン大統領は一貫して、NFZの設定はあり得ないと断言している。

しかしゼレンスキーは、どちらにしてもNATOは戦争に引きずり込まれるだろうと警告している。

ロシア軍が3月13日、NATO加盟国ポーランドとの国境に近いヤーボリウの軍事訓練センターを巡航ミサイルで空爆したことを受け、ゼレンスキーは14日に公開したビデオ演説で次のように述べた。「私たちの空を閉じなければ、ロシアのロケットがあなたの領土、つまり、NATOの領土に落ちるのは時間の問題だ」

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナ上空にNFZを設定すれば、「武力紛争に参加」したと見なさすと述べている。

不安定な地域

一方、ポーランドの駐ウクライナ大使であるバルトシュ・チコスキは3月第2週、母国のニュースチャンネルTVN24で、ウクライナの空を閉鎖すれば、戦争の終結が早まり、人々の命を救うことができると語った。

ロシアと国境を接するエストニアは、さらに一歩踏み込み、議会がNFZの設定を要求した。

ロシアが2014年にウクライナのクリミア半島を一方的に併合して以降、東欧諸国には、ロシアの影響力がいずれウクライナの国境を越え、かつてソビエト連邦が支配していた地域にまで広がるのではないかという恐怖が広がっている。

アルバニア、北マケドニア、コソボ、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロで構成する西バルカン諸国のリーダーたちは、「近隣諸国の独立を弱体化させることで、ヨーロッパ全体を不安定化する」というプーチンの目的について警告し続けてきた。

ガーディアンの報道によれば、コソボとボスニア・ヘルツェゴビナの政治家たちはEUとNATOに対し、ロシアに対抗するため、西バルカン諸国からの加盟申請に迅速に対応するよう求めている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中